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マジかそんな馬鹿な嘘だろ(20)
ニールに抱きしめられているとホッとする。
安心して、強張った身体も心も解けていってしまう。
ハッタリの鎧がボロボロと崩れ落ちていくのを不思議な気持ちで傍観していた。
あぁ、俺は本当にこの男に囚われてしまっていたんだな。
初めて会った時から、恋に落ちていたんだ。
「俊樹?」
黙り込んだ俺の顔を覗き込み、ニールが俺の名を甘く囁く。
腰から走るぞくりと甘美な痺れを押さえながら
「何でもない…ただのセフレが解消されて良かったと…んっ」
顎を掴まれ、唇を優しく食まれた。
じゅるじゅると粘着質の音を響かせる大人のキスは、お互いの身体に火を付けるのには簡単なことだった。
「俊樹…無理させないから…お前が欲しい。」
ストレートに求められて、女々しくもじわりと涙が膜を張る。
ニールだけじゃない。俺もそう思っていた。
「寝込まない程度に…頼む…」
瞬時に破顔したニールに押し倒され、降るキスを受け止めた俺は、明るい日差しが差し込む部屋で、再びニールを受け入れたのだった。
「俊樹、俺今夜はここに泊まるから。
あ、さっきデリバリー頼んだからね。
もう暫く休んでて。」
「……………」
ベッドに横になったまま、甲斐甲斐しく俺の世話を焼くニールを睨んでいる俺。
何が“無理させない”だ。無理だらけだったじゃないか。
挙げ句の果て、動けないほど抱き潰しやがって。
…煽った俺も俺だ。自業自得だ、仕方がない。
枕元に正座して背中を丸め、俯くニールを見ていると、何だかおかしくなってきた。
ふーん、反省してるのか。
「…風呂に入りたい。」
「わっ、分かった!あっ、でも配達受け取ってからでいいか?もうすぐ来るはずだから。」
その後お腹の膨れた俺は、頭の天辺から爪先までご丁寧に洗われ、『ニールに愛されている』という多幸感に満たされて、これまでの不眠が嘘のようにニールに抱かれたまま、朝を迎えたのだった。
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