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景色が変わる(3)
「どうしたの?」
「うん、満から。すぐ分かるように着信音変えてるから…こんな時間に何かあったのかもしれない。」
説明しながら慌てて画面を確認すると…どうも違うような気が…
[俊樹、お前にはもう少し休養が必要だ。
今日一日、追加の有給休暇を申し付ける。
そこにいるド阿呆に伝えてくれ。
『今度俺の大事な家族を泣かせたら、全力でお前の会社を潰しに行くから覚悟しろ』
明日からまたよろしく頼む。]
「満……」
言葉にならない。
固まっている俺の手元を覗き込んできたニールは
「マジか。」
と呟いて笑い出した。
「くっくっくっ…やることが一々ツボる。
俊樹、『ド阿保が“確かに承った”と言っている。』と打ってくれ。
これで…2人でのんびりと過ごせるな…」
「何言ってるんだ!?お前、仕事っ!仕事は!?」
ふっ、と口角を上げたニールは自分の携帯を操作すると、俺の前に突き出した。
「えっ、何?」
[お疲れ様です。出張プラス10連勤お疲れ様でした。
ご希望通り2日間の有給休暇を受け付けいたします。
余程の用事がない限り連絡致しませんので、エネルギーチャージして、またご出勤されるのをお待ちしております。]
「何、これ…10連勤って」
「頑張っただろ、俺?
うちの優秀な秘書殿が、日頃の俺の頑張りを認めて休みをくれたんだよ。
だから。仕事のことは気にしないで。
今までの埋め合わせをさせてくれ。たった1日でそれができるとは思わないから、一生掛けて俺の愛情で返していく。
俊樹、俺の愛をたっぷりと受け止めろ。」
「何を、うわっ」
ニールは俺の携帯を取り上げると、タタタタン、と軽やかにタップし
「はい、送信完了。」
と言って、俺の手に戻してきた。
「お前、何処に何を送ったんだ?
もしかして…満っ!?」
慌てて画面を開くと、正に送信済み既読済みのメッセージが現れた。
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