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景色が変わる(4)
[金山満殿
確かに承りました。
生涯大切に慈しみ歩んでいくことをお誓いいたします。
今後ともこれまで以上のご愛顧、謹んでお願い申し上げます。
ド阿保より]
「ばっ、ばかっ!何勝手に返信してるんだよっ!」
勢い余ってタンタンタップするが、もう既読されている。
満、こんな時間に起きるなよ!
ヤバい、相手の取り消しができないっ。
焦る俺に、ニールはのんびりと
「だって、ド阿保に伝えろと言われたから返信した。
上司の許可が出たんだ。今日は休みだよ、俊樹。
さぁ、まだ早い。もう少し2人っきりの惰眠を貪ろうじゃないか。
おいで、俊樹。」
ダメだ…抗えない…
朝っぱらからそんな甘い顔で誘うな。
じわりと熱を持ち始めた身体を持て余していると、携帯を奪い取られて電源を切られた。
そして、すぽんと布団に引き戻され、巻き付かれた。
「俊樹、もういいんだよ、甘えても。
俺の前ではその強固な鎧は脱いでいいんだ。
俺はお前の安らぐ場所になりたい。
『金山家のため』とか『満のため』も大切だけど、1番大切なのは、俊樹、お前自身なんだよ。
俺に…俺だけに…甘えろ。」
え?
俺はニールの顔を見つめた。
甘える?甘えるってどうすればいいんだ?
俺は…この男に全てを晒してもいいのか?
「俊樹、愛してるよ。」
俺は次第に、無限に降り注ぐ愛に溺れていった。
愛されるということの心地良さ。
自分そのものを求められるという優越感。
そして…俺自身がこの男を心から求めているということ。
愛する、愛されるってこんなに心が高揚するものなのか。
心に比例するように、身体も解けていく。
あり得ない深さまでニールを受け止める。
俺の名を呼ぶニールの少し掠れた声と、ただ喘ぐことしかできなくなっている俺の嬌声とが混ざり合う。
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