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景色が変わる(6)
ニールが俺の枕元に寝転んでいる。
「としきぃ…ゴメンって…ねぇ、何か言ってよぉ…」
返事をしたくても、カスカスで声が出ないんだって!誰のせいだ!?
甘えた声を出しているが、本当に反省しているんだろうか、定かではない。
本気を出したニールに滅茶苦茶に愛された俺は、午後を過ぎても起き上がることができなかった。
身体中に貼られた湿布。
これで治るんだろうか、不安。
明日は動けなくても絶対に出勤しなければならない。
『ヤり過ぎて休みます』なんて口が裂けても言えない。一生満に言われ続ける。アイツのバカ笑いが目に浮かぶ。くそっ。
それだけは避けたい。這ってでも出勤しなければ。
ベッドサイドには、ニールが買って来たんだろう、はちみつレ○ンや、のど飴や、幾つかの種類の喉に良さそうな物が置かれていた。
その中に、うどんがあった。
「…お腹、空いた…」
そりゃそうだ。夜明け前からずっと、その、飲まず食わずで…ううっ…ヤってたんだ。
お腹も空くし、喉も乾く。
ニールが飛び起きた。
「何?何食べる?どれ?これ?」
「…うどん…」
「分かった!待ってろ!」
うどんを片手に飛び出して行ったニールの後ろ姿があまりに滑稽で、笑うと腰に響いた。
「くっくっ…ううっ、痛てぇ…これ、マジか…
あの野郎、マジで俺のこと潰しやがって…」
いやいや、ニールだけを責めるわけにはいかない。あの時、煽ったのは俺だから。
はぁ…ため息をついて天井を見つめる。
目だけを動かして、視線を部屋に這わせてみた。
ベージュから青へと、すっかり模様替えされた部屋はまだ見慣れないけれど、ニールが言うように、完全に北欧テイストに変わっていた。
無意識って怖い。
あの時、俺の心は既にニール一色だったんだろう。
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