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景色が変わる(8)

ニールは空になったマグカップを俺の手から外すと 「どうする?洗面所行くか?横になるか?」 そうだ…さっきからトイレに行きたかったんだよ。イケメンの破壊力で忘れてた。 「洗面所、行く。」 「OK。」 ニールは壊れ物を扱うかのように、俺をそっと抱き上げた。 余りに自然なその動きに、抵抗するタイミングも忘れて見惚れてしまってそのまま運ばれた。 「…俺、女じゃないんだけど…」 降ろされる瞬間、精一杯の毒を吐く。 ニールは“何言ってんのか”という顔をして 「当たり前じゃないか。知ってるよ。 だけど、俺の大切なひとだからこうしたんだ。」 (何か文句でもあるの?) 最後は小さな声でぼそりと呟くと 「ドアの外にいるから、終わったら呼んで。」 と言い残して出て行った。 『大切なひと』『大切なひと』…頭の中をその言葉がリフレインする。 赤面、また赤面。全身火を噴く。 …取り敢えずトイレに行こう… ううっ…ちょっと腰が…明日動けるんだろうか…はぁ…煽った俺も悪いんだけど…… 何とか歯磨き洗面も済ませて、ゆっくりと歩を進めドアを開けると、イケメンが待機していた。 「歩けるのか?俺を呼べばいいのに。」 「…ゆっくりなら歩ける。明日が心配なんだけど。」 暗に『誰のせいだよ』という思いを込めて言った。 「そうだな…じゃあ、今のうちに診てもらおう。」 「は?誰に?」 「俺のダチの整体師。俺以外の男に触らせたくないんだが…腕は確かだ。背に腹は変えられん。仕方がない。」 ぶつぶつ言いながら、何処かへ電話を掛け始めた。 ちょっと!ちょっと、俺の意見は? と叫ぶ暇もなく、もう話し始めてる。 「俊樹、今休憩時間だからすぐ来てくれるって。ソファーに座って待っててくれ。」 コイツは…強引大魔王だ!

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