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景色が変わる(9)
それにしても、ニールの知り合いって多岐に渡る。
さっきの何でも屋さんもそうだし、今の整体師さんも。
確かに…ニールは知らず知らずに人を引き寄せるパワーがある。それに、彼の側は居心地が良い。
盛夏に咲き誇る向日葵のような明るさの時もあれば、穏やかな春の陽だまりのような心地良さの時もある。
きっと皆んな、そんなニールに惹かれていい人達ばかりが寄ってくるんだろう。
多少の無茶振りも『ニールだから』って許される部分がかなりあるんじゃないか?
それって、満にも当てはまる。
満も大概だ。檸檬君の苦労が見て取れる。
それでも最近は、満の扱いも随分上手くなって、手の平で転がしている風だけど。
まぁ、あの子も大変だけれど、満は相思相愛の伴侶に出会えて本当に良かったと思う。
そうだ!結婚式!
準備は何処まで進んだんだろう。
そろそろ本家と擦り合わせしなければ。こんなことしてる場合では…あぁ、来週にでも親父達と時間を合わせて…
はぁ…自分のことばかりで、大切な結婚式のことがぶっ飛んでいた。あぁ、秘書失格、面目ない。満、檸檬君、ごめん……
ピンポーーン
「おっ、早かったな。はいはい。」
勝手知ったるニールが玄関に向かう。
もうこうなったら、治るものなら何でもしてもらおう!
明日は這ってでも出勤するぞ!
「こんにちはー!あらあら、これは大変そうねぇ。
あ、初めまして。整体師の菱川紅葉 と言います。よろしくお願いします。
ニールのダチです。
さ、ここに横になって。失礼しますね。」
「あっ、こちらこそ。黒原俊樹です。
お忙しいのにお呼び立てして申し訳ありません。」
「いいのいいの。この人から踏んだくってやるからお気になさらず。
うつ伏せになれる?ゆっくりね。」
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