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景色が変わる(10)

言われる通りにゆっくりとうつ伏せになる。 紅葉さんは、見たまんまは男性なのに、言葉遣いやちょっとした仕草はとても細やかで女性的だ。俺が緊張しないように気を遣ってくれてるのが分かる。 手を当てられた所から、じわりと熱が伝わってくる。 このひとは人より体温が高いんだろうか。 物凄く気持ちがいい。 時折、『ヒュッ』『ヒュッ』と強く息を吐く音が聞こえていたが、治療の一環で呼吸を整えているのだと思った。 余りの気持ち良さにうっとりと目を瞑り、ついつい微睡んでしまっていた。 途中、仰向けになるように言われたが、夢見心地でぼんやりしていたので、それも定かではない。 ニールが「俺以外に触られて寝るなんて!」なんて騒ぐ声が聞こえていたが、それも子守唄に変わっていった。 「はい、終わりましたよ…って、あらぁ、ぐっすりだわねぇ。 起こすのかわいそうだし、このままにしておこうか、ねぇ、ニール。」 「そうだな。ありがとう、紅葉。 助かったよ。」 「アンタさぁ、ちょっと加減しなさいよね! 平日に抱き潰すなんてあり得ない! 今日は偶々空いてたからいいようなものの、何もしなかったらこの子明日も動けなかったんだよ!全く、もう…」 「あははっ!やっと思いを交わせたんだ。 激しくならないはずがないだろ?」 「あー、ヤダヤダ。色ボケしちゃって。少しは反省しなよ! …この子さぁ、人よりアンテナ張りすぎて気を遣い過ぎる。真面目過ぎんのよ。 で、優しいから“引き寄せ”ちゃうんだよ。 まぁ、祓っといたから暫くは大丈夫だと思う。」 「おぅ、ありがとう。また頼むよ。」 「出張費、高いわよ!」 「あははっ、友人価格でよろしくな! これ、今日の分。本当にありがとう。」 「あら、ニール多いわよ。」 「次も無茶聞いてもらわないといけないからな。よろしく!」 …なんて会話がされていたことなんて全く知らずに俺は眠っていたのだった。

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