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景色が変わる(11)
「…ん…っ」
ググッと大きく伸びをした。
あー…良く寝た気がする……ここ最近なかった爽快感に包まれている…
「おっ、俊樹、目が覚めたのか?」
えっ、この声…
「ニールっ!?」
「おいおい、俺の存在をないことにするなよ?
腰はどうだ?紅葉 にかかれば一発で良くなるはずなんだが…」
「あれ!?……痛く、ない…」
「だろ?はぁ、良かった…あのまま動けなかったら一生恨まれるところだった。」
「紅葉さん、凄い…あれ?紅葉さんは?」
「施術中にお前が寝ちゃったから『そのまま寝かせてあげて』ってもう帰ったよ。
『今度一緒にご飯に行こう』ってさ。」
「俺、お礼も言わずに…あっ、代金渡してないっ!」
「俺のせいだからお前は出さなくてもいい。
もう渡しといたから。
アイツは有名人だから中々予約も取れないんだが…空いててラッキーだったよ。」
「ニール、それとこれは別だ。ごめん。幾らだった?ちゃんと払うから。
え、有名人?」
「うん。“糸山天河 ”って名前、聞いたことないか?」
「いとやまてんが……てんが……
ああっ!ここ半年の検索ランキングトップ10に入ってる“予約の取れない整体師”!!
えっ、まさか紅葉さんが糸山天河!?」
「ははっ、そう。紅葉は本名。
糸山天河は、まぁ芸名みたいなもんだな。
アイツにとって整体はオマケ。本業は神社の神主だから。
俊樹、お前は『人よりアンテナ張りすぎて気を遣い過ぎる。真面目過ぎて優しいから“引き寄せ”ちゃう』そうだ。
憑いてたモノは祓ってくれたから、身体も楽になってると思うぞ。」
「あの、もしかして…何か『ヒュッヒュッ』って言ってた、アレ?」
「聞こえてたのか?
確かに…アンテナ張りすぎのところがあるからな…まぁ、それぐらいないと満の秘書なんて務まらないのかもしれんな。」
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