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景色が変わる(12)
それにしても…
「滅茶苦茶スッキリした…」
「それは良かった。じゃあ、今夜も」
「しませんっ!!!!!」
俺の反撃に、ニールはくしゅんと項垂れた。
そんな殊勝な反応をしても、もう騙されない。
せっかく治ったんだ。この爽快感を手放すわけにはいかない。
いくら恋人とはいえ、連チャンなんて身体が保たない。ニールのバケモノクラスの欲に付き合える程の体力は持ち合わせていないんだ。
そうか……
あのひとがあの有名な…治療してもらえてミラクルハッピーだ。
腰どころか頭もスッキリしている。
憑いてた、なんて…うへぇ、何が憑いてたんだろう…“はらった”って『祓った』ってことだよな、やっぱり。
怖過ぎる。もう考えないようにしよう。
クワバラクワバラ。
何度催促しても、ニールは掛かった代金を教えてくれない。さっき名刺を渡されたから、紅葉 さんに直接聞くことにする。
ニールに、教えてくれない代わりにお礼をしたいと、俺から提案をした。
「晩ご飯、食べに行こう。お礼にご馳走させて欲しい。」
「お礼なんていらないよ。そう言われれば腹も減ったな。
そうだ、天ぷらなんてどうだ?」
頭に揚げたてサクサクの天ぷらが浮かんだ。
じゅるり
「いいね。急にお腹が空いてきた。」
「着替えろ。手伝ってやる。」
「結構ですっ!!!」
何かと俺に手を出してくるニールをガードしながら着替えて、財布と携帯を掴むとニールをせかして部屋を出た。
「はぁ、美味しかったぁ…なぁ、ニール、何でお前が支払い済ませてんの?
カードで先払いするなんて卑怯だぞ!」
「卑怯って…俺がお前に食べさせたかったんだからいいじゃないか。
細かいことは言わないの!」
「だって、俺が」
「俊樹…それ以上うだうだ言ってると、ここでその口塞いでしまうぞ。」
ひっ。
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