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景色が変わる(20)
反論できない。というより、余りの堂々っぷりに圧倒されてしまった、という方が正しいかもしれない。
ニール御用達のホテルのレストランに着いても、いつもの何割増しかのイケメンオーラを振り撒いているニールは、俺と視線が合う度に、蕩けそうな笑顔で見つめてくる。
他人がどう見ていようとお構いなしで。
俺の顔は絶対に顔は赤く染まっているはず。
ああっ、止めてくれ。無駄にオーラを振り撒くな。
免疫がないから、俺は倒れてしまう。
心の中で叫びながら、俺は味のしない、何処にどうやって収まったのか分からない朝食を済ませ、覚悟を決めてニールと出社した。
歩き方はぎこちなくないか
声はうわずっていないか
ニールとの適度な距離感は保たれているか
そんなことばかりが頭をぐるぐると回っている。
そんな俺に気付いているのかいないのか、ニールはやたらと俺にボディタッチを繰り返している。
ばか。ここは会社だ。誰が見ているのか分からないのにそんなこと止めろ。
睨みつけても何処吹く風のニールに多少イラつきながら、一応社長室をノックした。
「はい、どうぞ。」
檸檬君だ。ということは…意を決して開けたドアの向こうに、満と檸檬君がいた。
「…おはようございます。大変ご迷惑を掛けて申し訳ありませんで、うぐっ」
「俊樹っ!ニールっ!おめでとうっ!」
満の大声が降ってきた。
オマケに思いっきりハグされている。ニールと一緒に。
「お前ら、やっと、やっと…俊樹、謝罪は後だ。
ニール、俊樹は自分のことを後回しにする、思いやりの深い男だ。
必ず幸せにすると誓ってくれ。
俊樹は俺の家族同然なんだ。絶対に幸せにしてもらわないと困る。」
「満…」
「当たり前だろ!俊樹は俺の家族に貰い受ける。
一生、いや、来世も一緒だ。離れないし離さないと誓う。
段取りを踏んで、正式に黒原家と金山家にもご挨拶に伺うから、その時には協力を頼む。」
その言葉に不覚にも涙が滲む。
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