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景色が変わる(24)
流石にちょっとだけ心が痛んだ俺は、すれ違いざまニールだけに聞こえるように囁いた。
「(すぐ上がるから、1階ロビーで待っててくれ)」
ニールは驚いたように俺を見ると、さっきのへしゃげた顔は何処へやら、満面の笑みを浮かべて頷くと、こちらを何度も振り返りながら足取り軽やかに廊下を歩いて行った。
あぁ…甘い。甘やかし過ぎる俺。
ふぅ、とため息をついてドアを閉めると、こちらも満面の笑みの檸檬君が待っていた。
「黒原さん、もう時間です。ご遠慮なくどうぞ。」
「…ゴメン…恥ずかしいところ見せちゃって…
お先に上がらせてもらうよ…」
「何言ってるんですか!
俺達の恥ずかしいところ、散々見て聞いてるじゃないですか!!
それに比べたら、こんなの…さ、早く早く!
待たせる時間が長いと、マズいですよ!」
「それもそうだ。檸檬君、ごめん、この埋め合わせは必ず!」
早く早くと急き立てられてカバンを引っ掴むと、俺はエレベーターへと走って行った。
…いた。
エレベーターの前に佇むだけで絵になる男が…
段々と走る速度を緩めて、息を整えながら真っ直ぐにニールに向かって行く。
俺に気付いたニールは、両手を広げた。
スカッ
「あれ?腕の中に俊樹がいない…」
自分で自分を抱きしめる格好の、何とも情けない姿のニール。
「当たり前だろ。誰かに見られたらどうするんだ。
ほら、もうすぐエレベーターが来るぞ。」
とん、と軽く肩を打つけて、少し距離を取って立つ。数十センチの空間が、今はもどかしい。
ニールの柔らかで熱い視線を感じながらエレベーターに乗り込むと、やがて乗り込んでくる人混みに押されて離れ離れになった。
ひしめき合う小さな箱の中で、俺はニールのことを考えていた。
多分…ニールも俺のことを……ふと、顔を上げると、視線が絡まった。
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