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景色が変わる(26)

「俊樹、卵はどれ?」 「あぁ…こっちの。ニールって普段買い物行ったりするのか?」 「当たり前じゃないか!…俊樹、俺はただの普通の男なんだよ?自分で飯くらい作るって。」 「ふふっ、そうだよな、ごめん。 キッチンなんて使うこともない、いつも外食するイメージがあってさ。」 「酷い。偏見だ。」 拗ねるニールを宥めながら、必要な物だけカゴに入れていく。 行き慣れたただのスーパーすら、ニールと一緒なら何か特別な場所に見えてきてしまうのは不思議だ。 何処か浮かれてる冷静じゃない俺。 「あ、俊樹!これ食べようよ!」 立ち止まったニールがガン見しているのはプリン。 なるほど、柄の長いスプーンがペタリと貼られた、小さいサイズの牛乳瓶にプリンが入っている。 そのポップにはデカデカと『とろぉ〜りとろける究極のプリン』と書かれていた。 「…へぇ…『放し飼い地鶏の卵と餌にこだわった牛のミルクで愛情たっぷりに作りました!』だって。 ニール、甘い物好きなのか?」 むふっ、と笑ったニールは頷いた。 そんな顔されたら…仕方ないなぁ。 「…買ってみる?」 「俊樹の分も!」 「食後の別腹な。」 割れないように2個、これもカゴに入れた。 足りなかったのは卵だけだから、これで終了だ。 スタスタとレジに並ぶ俺に 「もう終わり?」 「うん。卵が足りなかっただけだから。 何?何か欲しい物でもあった?」 ニールはもごもごと 「…いや、その…何だかデートみたいで楽しかったから…もうその時間が終わったのかな、って思ったらさ、残念で…」 「…何だ…俺と一緒か…」 「えっ!?俊樹?今、何て言った!? もう1回、言って!ね、ね?」 「…言わない。」 順番がきた俺は、ニールと同じ思いだったことの嬉しさを隠すように、素早くカゴをレジの机に置くとエコバッグを取り出した。

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