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景色が変わる(27)

ニールの家にどんな道具があるか分からなかったし、手慣れた使い勝手のいい方が良かったから、どうしようか悩んだけど取り敢えず家に来てもらった。 ニールが『俺も手伝う』と言うのを丁寧に断って、俺は最後の仕上げのふわふわ卵作りに精を出している。 俺がキッチンで支度をするのをニールは椅子に腰掛け黙って嬉しそうに眺めている。 何もせず、ひたすら見つめられているというのは、何とも擽ったくて身の置き場がない。 「ニール…ただ見ているだけでそんなに楽しいのか?」 「うん!」 上機嫌で答えたニールは、また目を細め口元を緩めて俺を見る。 ニールの口に合うだろうか。 (美味しくなあれ)と心の中で唱えながら作っているから、美味しくなっているはずなんだけど。 檸檬君はお代わりまでして『凄く美味しいからレシピを教えて下さいっ!』とキラキラの目をして言ってくれたから、お世辞と分かっていても、まぁ他人様が口にできる腕前だと自負している。 本家に通って聡子さん達に仕込まれたし、これだけ自炊生活が長いと大概のものは作れるようになっているのだが。 「俊樹、もうできる?いい匂いがしてさっきからお腹が鳴ってるんだよ。」 「お待たせ。口に合うといいんだけど…」 ドキドキしながら湯気の立つメインディッシュをニールの目の前にセッティングした。 「あっ、“ニール”って書いてある! 俊樹…ハートもつけて。」 希望通り、ハートをケチャップで書いてやった。食べたら消えるのに。 俺が座るのを待ちかねて、ニールは子供みたいに 「いただきますっ!」 と両手を合わせて大きな声を出した。 そしてスプーンでハートの中の空白部分を塗り込め、真っ赤なハートにした後、『勿体ないな』と呟きながらざくりと刺し、口の中へ。 もぐもぐもぐ………ごくん。 「うっまぁーーーいっ! 俊樹、美味しいっ!俺、毎日オムライスでもいい!」 「そんな大袈裟な…」 呆れた。頭も舌も花畑か!?

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