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景色が変わる(29)

鎧? 楽に呼吸? 首を傾げたまま返事をしない俺に、ニールが俺の目をしっかりと見つめながら言った。 「そう。 俺の前では、金山家や満を守るための鎧を纏う必要はないんだ。 素のままの、そのままの俊樹でいてほしい。 我儘も言えばいいし、暴れてもいい。 俺はどんな俊樹でも受け止める自信がある。 俺の側にいれば、肩をいからして周囲の敵を威嚇することもいらない。 ゆったりと穏やかに過ごせばいい。 というより、そんな関係でありたい。」 「…俺、そんなに気を張って生きてるように見える?」 「…ちょっとね。 余りに優秀過ぎて隙がなさ過ぎる。 張り詰めた糸は、いつかプツリと切れてしまうよ。」 「…そんなつもりないんだけど…」 「うん、そうだよね。俊樹は真面目だから。 満と君は特殊なんだよね。育ってきた環境もそうだ。 幼馴染で対等かと思えば、ビジネス上で上司部下の関係で、尚且つ代々続く主従関係の御家柄だ。 家でも会社でもその関係は24時間ついて回るんだ。 だから、無理してるとは言わないけれど、自制心が強過ぎるように見える…だから、俺といる時は俺に甘えてほしいんだ。」 「特別そんな風に思ったことないけどな…だって、生まれた時からそういう環境で、親の敷いたレールに乗っかった感はあるけど、それが嫌だとは思わなかったし。 本家での修行も、満のため金山家のため、というより、将来的に絶対自分の役に立つという確固たる信念があったからやってきたことで。 辛い時もあったけど、止めようとは思わなかった。 ……今更『素の俺』って言われても、俺には分からない。」 「混乱させたならごめん。それに、今まで俊樹がやってきたこと、やろうとすることを否定するつもりは更々ない。 それだけは勘違いしないで。 要するに、俺は甘えてほしいし、甘えたいだけなんだ。」 「じゃあ最初からそう言えばいいじゃないか!」 ニールのまどろっこしい言い方に腹が立ってきた。

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