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景色が変わる(31)
ニールの切ない視線を感じる。
全てにおいてハイスペックな男にこんな顔をさせるのは俺だけ…そう思うと、今まで感じたことのない優越感に満たされてきた。
無言でニールの前にソーサーごと置いた。
「ありがとう。」
それにもワザと答えず、席についた。
さっき封を切ったばかりのコーヒーの香りは、濃く部屋に漂っている。
「…いただきます…」
食後のコーヒーくらいで律儀な男だ。
さっきの怒りは、既に収まっている。
きちんと言葉にしなければ相手には伝わらない。
『分かってくれるだろう』『察してくれるだろう』ではダメなんだ。
勇気を振り絞って名前を呼んだ。
「…ニール。」
ニールが伏せていた目をこちらに向けた。
「…もう、怒ってないから。
俺の…今まで歩んできた人生を全否定された気がして…カッとなって声を荒げてしまって…ごめん。
そうしなければ、対等に張り合うこともできなかったし、戦ってこれなかった。
俺は恥ずかしながら、こんな恋愛って初めてのことで…どうやって向き合っていいのかも正直言って分からない。
甘える、とかどうしていいのか分からないんだ。
こんなの重いだろ?嫌になったんじゃないか?」
ニールは手を伸ばして、テーブルの上の俺の手をそっと握った。
「俺はどんな俊樹も愛おしくて堪らない。
自分の思いを打つけ合って理解して共感して…俺達は一つずつ一緒に恋愛の階段を登っていこう。
俺達は俺達の愛を育んでいくんだ。」
そして、席を立ち俺の前に跪くと、恭しく手の甲にキスをした。
「俊樹、全身全霊を掛けてあなたを愛します。」
うわぁ…映画のワンシーンみたいだ…
頭がぼおっとしてくる。夢か幻か?
ニールにキスされた所から、強烈な熱波が這い上がってきた。
俺は、こくこくと無言で頷くことしかできなかった。
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