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憧れ(3)
あぁ、そうか。そうだった!
満達のこともあったし、ウチは元々そういうことには免疫がある家系だ。
とはいっても、まさか我が息子が“そう”だったなんて、親父達も吃驚したはずだ。
親父…ごめんな。俺の口から言った方が良かったか…いや、この方が冷静になれて良かったのかも。
…聡子さんの耳にも入ってるだろうなぁ。
今度本家に行く時に、どんな顔して行きゃあいいのか…ううっ、小っ恥ずかしいにも程がある。
『あら、まぁ。御当主のみならず目付役もですか!?あらあら、何てこと』なんて言われそうだ…
「…ニール、段取りはいいけれど、そんな大事なことは先に俺に言ってくれないと」
「分かってるよ、俊樹。
でも、お前ん家も“こういうこと”の手順を大切にするんだろ?
親父さん達、お前が女性に興味がないかも…って薄々勘づいてたみたいだし。」
「うげっ!?何それ!?マジ!?何で!?」
「その言い方…ぶふっ…女性の影すらないし、全くその手の色気というものがなかったって。
お見合いの話を振っても乗り気じゃなかった。
だから、ひょっとして…って思ってたって。
『まぁ、俊樹が幸せならそれでいい』ってさ。
これで俺も大手を振って黒原家にご挨拶に行ける。
でも…俊樹、お前の気持ちも考えずに…先走ってすまない。」
しゅん、と項垂れたニールを見つめる。
俺の気持ちは分かってるから、“家”の方の根回しをしてくれたんだよな。
「…ニール…お前の気持ちはよく分かってる。
お前、俺を手に入れるために周囲をガチガチに固めたかったんだろ?
包囲網めぐらせ過ぎ。
そんなことしなくても、俺はもう、お前のものなのに…」
「俊樹…」
ニールに顎を掬われて瞳が合わさった。
吸い込まれそうな美しい碧 に俺が映り込んでいる。
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