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憧れ(4)

す…と引き寄せられるように唇が合わさるその瞬間に、俺の携帯の着信音が鳴り響いた。 ズッコケるニール…… 「…ゴメン。」 無視しようとしたが、何度も何度も繰り返す着信音に痺れを切らして画面を見た。 「っ…親父っ!?」 慌ててタップ! 「もしもしっ!?」 『あー、やっと出た! おい俊樹、お前水くさいなぁ。 親に隠し事なんてするなよぉー。』 「…親父、ゴメン。」 『言い難いのは分かるけどさ。 俺はそんなに信用なかったかな。何でも相談してもらってると思ってたんだけどな。』 「そんなことはない、けど。」 チクチクと嫌味混じりのボヤき。 『でもまぁ、おめでとう。 先方も礼を持ってこちらにご挨拶に来て下さったし、俺達は反対しないから。 近いうちに2人で来なさい。 御隠居達も喜んで下さってるから、そちらにも顔を出すといい。 日が決まったら連絡してくれ。』 「…うん、分かった。 親父、あの」 『“ごめんなさい”は無しだぞ。 ニール君にヨロシク伝えてくれ。じゃあな!』 俺が口を開く前にプツリと電話が切れた。 「…“ありがとう”くらい言わせてくれよ…」 俺の呟きに、それまで黙って聞いていたニールが、俺をそっと抱きしめてくる。優しく、壊れ物でも扱うかのように頭を撫でられる。 「…聞こえてた?」 「うん、ちゃんと。お父さん、受け入れてくれたんだ。」 無言で頷く俺。 バレて恥ずかしいとか、御隠居の所に報告に行くのが面倒だとか、そんなことはすっぽりと頭から抜け落ちて、ただ俺を抱きしめてくれるニールの温もりに心が寄り添っていて。 「俊樹、土曜日には婚約指輪を買いに行くぞ。」 「え?指輪?」 「日にちを見て、結納にも伺う。 それまでに結婚式もいつにするか決めないとな。 俊樹、今から忙しくなるぞ!」 指輪…結納…結婚式… 今まで縁のなかった単語が頭を埋め尽くし、俺はただ、によによと笑うニールを見つめるだけだった。

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