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憧れ(5)

結婚って、こんなに準備が面倒で慌ただしいものだったんだろうか。 満と檸檬君のは、全然負担に思ったりしなかったのに。 いざ自分のことになると、段取りの全てに戸惑いを感じてしまう。 いつもの調子の出ない俺に、満が笑いながら言う。 「俊樹、俺達に関しては全く第三者的な立場で淡々と進めていくからじゃないのか? あ、変な意味じゃないから悪くとらないで。 冷静に見れる、ってことだよ。 だから事務的にも1番いい選択ができる。」 「やっぱりそうかな。」 「俺だって、自分で決めていこうとしたら時間が掛かって大変だったと思うよ。 俊樹のお陰で全てがスムーズに進んでる。 本当に感謝してるよ、ありがとう。」 「どういたしまして。 はぁ、それなりに思い描くことはあるけれど…これが俗に言うマリッジブルーってやつなんだろうか…」 そこへ檸檬君がコーヒーのいい香りとともに姿を見せた。 「俺、黒原さんがいなかったら引きこもってたと思いますよ。 本当にありがとうございます。」 「そんな大袈裟な…特に君達はやることが多いからね。 これでもかなり押さえた方なんだけど。」 「俺達のことは目処が付いたとして、お前達の方はどうなってんの?」 「俺の方か…うーん…」 「何か面倒なことでもあるのか?」 「うん…俺達、2人っきりで式を挙げようと思ってるんだけど。」 「…あぁ、親父殿か。」 「そうなんだよ。出席するって聞かなくって。 ニールが誰も呼ばないって言うから、それに合わせようとしてるのに言うこと聞かないんだ。」 「俺からお願いしてみようか?」 「そうしてもらえると助かる。 満の言うことなら聞いてくれるかもしれない。」 「分かった。ウチの親父にも頼んでみる。 その代わり、お披露目というか、食事会だけしたらどうだ?」 「それもあり、だな。」

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