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憧れ(7)

檸檬君は薬指の指輪を愛おしそうに摩りながら言った。 「以前お話しした方思うんですが、とても親身になってくれるショップがあるんです。 本当に不思議なご縁で繋がってて、色々とお世話になっちゃって…」 「あっ、『jewelry(ジュエリー) halfmoon(ハーフムーン)』だろ!? 檸檬君のサプライズプレゼントでも凄く親切にしてもらった所だよね? ニールもオススメだと言ってた。とても評判がいいらしいよ。 見に行こうと思ってても、そんなショップなんて何だか敷居が高くってさ。」 「名刺貰ってるから、予約して行ってこいよ。 ニールも呼び出して一緒にな。 遥さんと檸檬の名前を出したらもっと勉強してくれるはずだよ。 ひとつずつ、2人で決めていけよ。 …俺は俊樹に丸投げして申し訳なかったけどさ。」 「本当にごめんなさい。」 「いや、満達のは本家が絡むから気にしなくていい。2人でできることは任せてあるんだし。 気にしないで。 それに俺は楽しんで進めていってるから。」 「黒原さん、でも」 と、そこへ俺の着信音が響いた。 「あ、すみません。誰だろう…ニール!?」 「早く出てやれよ。」 気を利かせたのか、満が檸檬君を連れて社長室へと席を外した。 仕事中に…と思いながらも、こんな時間に緊急かと思い直し、画面をタップした。 「もしもし?」 『俊樹、仕事中にすまない。 今日、時間あるか?』 「あぁ。定時に上がる予定だが…どうした?」 『一緒に行きたい所があるんだ。』 何故だか予感がしてドキッとした。 「何処に?」 『指輪を見に行きたい。2人で。』 全くこの(恋人)は…俺がして欲しいことがどうして分かるんだろう。 「…奇遇だな…俺も…そうしたいと思ってたんだ…」 『マジか!?じゃあ決まりだな。迎えに行くから待っててくれ。 じゃあ。』 心にほわっと温かなものが灯った。

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