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憧れ(8)

心がホワホワと温かなまま終業時間を迎え、満に冷やかされながら玄関を出た。 「俊樹!」 「ニール!」 見慣れた車の助手席に滑り込んだ。 「待たせてごめん!」 「今着いたばかりだよ。逆に君を待たせなくて良かった。」 こういうところが紳士なんだよなぁ… 「ありがとう。なぁ、見に行きたい所って…」 「うん。前話してた、jewelry(ジュエリー) halfmoon(ハーフムーン)。 やっぱり、式より先に俊樹を俺のものだと形にしたくてさ。 …俺の我儘かな?」 やっぱり!俺はふるふると首を横に振った。 「実はニールから電話があった時にさ…檸檬君達と指輪の話をしてて…俺も、俺がニールのもので、ニールが俺のものだっていう証が欲しいというのか…… ニール、俺さぁ…まだ、その…結婚っていう実感がなくって…檸檬君が言うには『自分達の結婚のことで極め過ぎちゃったせいじゃないか』って………」 「何となく、そうかな、っては思ってたよ。」 「え!?マジで!?」 「だから早く形に見える物で安心させたかったんだけどね。 中々時間が取れなくて悪かった。」 「そんな…ニールが謝る必要はないよ。 俺の問題だから。」 「俊樹ひとりの問題じゃない。 ただでさえ、同性ってことで気を張る部分が沢山あるんだ。 お前が気になることは、少しでも多く取り除いてやりたいんだよ。 …さっきも言ったけど、俺は俊樹を束縛したいだけなんだ。 独占欲の強い男で悪いな。」 ニールは、ははっと笑った。そして、手を伸ばして俺の右手に指を絡めてきた。 全く、俺の恋人()は…俺をこれ以上メロメロにさせてどうするんだよ! 絡み付く指に左手を重ねて包み込む。 これだけで俺の気持ちは伝わるだ。 …いや、ちゃんと言葉にしないと。 「…ニール、ありがとう。 俺は…その束縛も独占欲も…嬉しい……」 耳まで真っ赤になった俺に、ニールは微笑みながら「ありがとう」と呟いた。

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