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憧れ(16)

緊迫感と甘ったるい空気を車内に纏わせたまま、マンションに着いた。 ニールは荒々しく車を入庫すると助手席のドアを開け、無言で俺の手を取り建物の中へ入っていく。 繋ぐ手がしっとりと湿り気を帯び、つんのめるようにエレベーターに引っ張り込まれた。 「んんっ!?」 突然覆い被されて、噛み付くようなキスをされる。 鼻呼吸も間に合わないくらいに苦しい。 ばか、エレベーターには防犯カメラがついてるんだぞ!? 誰か見てたらどうするんだ!? 腕を突っ張っても叩いても、ニールはびくともしない。 逆に力を込められて、逃げ出せなくなった。 上昇する小さな箱の中で拘束されて唇を奪われている。 ふっ…と微かな浮遊感が止まると、ドアが開く寸前にやっとニールが離れた。 「…っ…はぁっ…」 抗議の目を向けても素知らぬ顔のニールは、再び俺の腕を取り歩き出した。 この後は… 睦み合う2人の姿が脳裏に浮かび、妄想を追い払おうと首を左右に振ってみる。 『何を戸惑ってる? 愛する男と愛し合うだけだろ?』 俺の中のもう1人の俺が囁き掛けてくる。 さっきのキスで身体は簡単に()が点いて、お腹の奥がずくりと疼いた。 ニールはドアを開け、俺の背中をそっと押した。 ガチャリ 金属音を鳴らしたドアは、外界との一切を遮断してしまった。 2人っきりの密室。 ニールは俺の靴を脱がせると、軽やかに俺を横抱きにすると部屋の奥へと進んでいく。 部屋の奥…寝室!? 「ニールっ!!!」 「…今更、NOなんて言わないで…」 「違うっ…あの、シャワーを…」 「あとで。」 「頼むっ!その…準備してない、から」 「俺は構わない。」 「俺が嫌なんだ!お前には…綺麗な俺を…抱いてほしいから…」 ぐっ、と言葉を失ったニールは俺をじっと見つめている。 何か言い間違えたか?

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