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憧れ(17)
くっ、とニールの顔が近付いて、唇が触れる寸前で止まった。
「…ったく…俊樹、俺をどれだけ煽ってるか自覚あるの?
かわいいにも程があるぞ?
そこまで言うなら、俺が…隅々まで綺麗にしてやる…」
そのまま唇を押し当てられて、良いとも悪いとも返事ができない。
そんなこと、自分でやるから!
って言うか、そんなことしないで欲しい!
ふ、と唇が離れて左手を持ち上げられた。
何をするのか予想がつかずにぼんやり見ていると、ニールは俺の薬指を口に含むと根本をぎりりと噛んだ。
「痛っ」
一瞬、何をされたのか分からなかった。
じわじわと鈍い痛みが伝わってくる。
「お前はもう俺のものだから。」
まさか、指輪?指輪のつもりなのか!?
ニールの口元にある自分の指を見た。
少し赤くなった指の根本は、歯形が薄っすらと赤い輪を作っていた。
「ニール…」
「本物はもう少し後で…今は、これで我慢して。
…俊樹も。」
ニールはそう言うと、俺の口元に左手の薬指を押し当ててきた。
「ねぇ、噛んで。」
ふにふにと俺の唇を柔く押してくる。
「俊樹、ねぇ。」
悪戯な子猫のような目つきをしたニールの口元が綻んでいる。
根負けして少し口を開けると
「いい子。」
と言って、えずかないように気を遣っているのかそっと指を差し入れてきた。
加減しながらも言われた通りに、ぎっと噛み付くと、満足したのかゆっくりと抜かれて口内の圧迫感が消えていった。
ニールは左手を裏表にひらひらとひっくり返しながら
「…ちょっと薄いけど…まぁ、いいか。」
と、ご満悦だ。
そして俺のネクタイを外し始めた。
「えっ、ちょっ、ニール!?」
「一緒に風呂に入るぞ。YESかYES。俊樹、どちらか選べ。」
「はあっ!?そんなの一択じゃないかっ!」
訳の分からない選択を迫る恋人に呆れ果てる。
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