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憧れ(19)
その通りだ。言い返せない。悔しい。
ニールは俺の手を取ると、シャワーの下に立たせた。
「ニールっ!だから、俺が自分で」
「観念しろ、俊樹。俺だけの特権を奪うな。
…絶対に痛くしないから…」
柔らかな優しいキスが、顔中に落とされる。
俺がニールのキスに弱いのを知ってて。
ズルい。卑怯だ。
程良い温度のシャワーの飛沫が肩に当たる。
うっとりとキスに溺れている間に、いつの間にかボディソープの泡でもこもこにされていた俺は、どさくさに紛れて、それでもしっかりと後孔を洗われ解されて、息が上がってしまっていた。
立っているのも覚束なくて、目の前の男に縋り付いてしまう。
「…っ…ニールの、ばかっ…ふぅっ…」
「ふっ、色っぽいなぁ俊樹…堪らないよ。」
「そんなこと…んふっ」
ニールは、時々ワザと俺の感じる所を指先で掠め、その度に俺はついつい甘い声を出してしまう。
色っぽい?俺が?
ニールは俺の何を見ているんだろう。
俺は何処を見ても男で…声だって…。
「…俺は、男で…かわいくない…」
「俊樹の全てが俺を欲情させるんだ。
このぺったんこの胸も、俺と同じモノも、低い掠れた声も、何かもが愛おしくてならない。
俊樹…お前が思っているよりも、ずっとずっと俺はお前にゾッコンなんだぞ。
この俺が何もかも捨ててもいいくらいに、お前のことを愛してるんだ。
俊樹、好きだ、好きだ、好きだっ!」
不意に左手の薬指を掲げられ、キスされた。
「早く、俺の所有だという本物の印で繋ぎ止めたい。
逃げようったってそうはいかないよ。
俊樹、不安なら何度でも伝えるし、何度でも…抱く。
だから…一生俺の側で笑っていてくれ。」
どうして。
どうして俺の欲しい言葉をすぐにくれる?
「ニール…愛してる…」
細かな水の粒子が舞う中で、破顔したニールに強く抱きしめられて、俺は溢れる涙を押さえることができなかった。
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