142 / 174
憧れ(25)
ニールは俺の中に入り、荒々しく優しく俺を抱いた。
激しい抽挿に反発するベッドのスプリングが、ギシギシとリズミカルに響く部屋は、俺達の匂いで満たされていた。
情欲した青い瞳に見つめられて翻弄され、『愛している』という言葉に耳すら犯されて、頭がバカになったんじゃないかとさえ思っていた。
俺は、何度も何度も達してしまって途中幾度か意識が飛びそうになり、もう正常な判断なんかできる状態ではなかった。
記憶だって残ってはいない。
どんな声で啼き、どんな痴態を晒したのか、恥ずかしくて聞く気にもならなかった。
ただ、後で聞いた話によると…うわ言のように『ニール、愛してる』『俺を愛して』とそればかりを口にしていた、らしい。
ニールが嬉しそうに、によによと笑いながらそれだけは伝えてきた。
「…それがそんなに嬉しかったのか?」
「当たり前だろ!?
愛してる相手が意識朦朧で言ってるんだぞ!?
そんな状態で言うのは、本心からの言葉に決まってるじゃないか!
俺は俊樹に愛されてるんだぁーーーっ!!!!!」
「…大袈裟…」
「それでもいいんだ!」
ニールは顔中にキスの雨を降らせ、俺の左手をお互いの顔の前に持ち上げると、薬指に恭しくキスをした。
「ここに…俺達の愛の証が添えられる。
小さなただの輪っかにしか見えないだろうが、離れている時間もこれを見る度に、お互いのことを思うきっかけになる。
どんなことがあっても、俊樹のことを思えば勇気が湧いてくると、そう思う。
“虫除け”効果もバツグンだろうけどな。」
会えないその時間も相手のことを思い出せる。
思うことで頑張れる勇気を受け取り渡し合う。
俺もニールの左手を持ち上げ顔の前に捧げると、薬指にキスを返した。
「俊樹…」
俺は微笑んで、ニールの唇にキスを送った。
ともだちにシェアしよう!