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結ぶ(7)

何だろうと不思議に思いながらもお礼を言って、丁度受け取った時にニールが戻ってきた。 「ご主人様お見えですよ。 俊樹さん、どうぞお幸せに。良ければまたお茶飲みにいらして下さいね。」 「あっ、はい! あれこれ何から何までお世話になりありがとうございました。 オーナーさんにもどうぞよろしくお伝え下さい。」 そこでお礼の押し問答(笑)が暫く続き、大笑いの中俺達は遥さんやスタッフさんに別れを告げた。 俺はどうしてもニールに言わなくちゃならないことがあって…… でも、大切なことだからここでは言いたくなかった。 ちゃんと目と目を合わせて、心を込めて伝えたかったから… ニールは俺の様子がいつも違うことを気にしていたみたいで、車が信号に捕まる度に何か言いたげに視線は飛んできていたが、何も聞かないでいてくれた。 …マンションのエレベーターの中でも無言で… それでもニールの手は俺の手をしっかりと繋いでいた。 「ふぅ…俊樹、お疲れ様。流石の俺も緊張したぞ。」 「ニール、ありがとう。コーヒー入れるから…」 「うん、手伝うよ。着替えて楽にしよう。」 楽チンな部屋着に着替えると、俺はすぐにキッチンに向かい、お湯を沸かした。 ニールもやってきて、コーヒー豆をセットしてくれている。 黙っていても心地よい空気。 俺はお湯が沸く間、オーナー夫夫からプレゼントされたフォトフレームを取り出し、リビングのチェストの上に飾った。 「俺もそこがいいと思ってたんだ。」 弾むようなニールの声がして、振り向くとマグカップを2つ持ったニールが笑っていた。 「…そうか、良かった。何処がいいか後で聞こうと思ってて…」 「俊樹、おいで。コーヒーどうぞ。」 「ありがとう。」 労うような視線に誘われて、ニールの横にピッタリとくっ付いて座った。

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