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結成まであと1年 3

 雲雀は帰る準備ができていたみたいで、すぐにこっちに来てくれた。  やっぱり待たせちゃったのかもしれないと心配したけど、おれを見つけると、少しだけ表情を緩める。キリッと凛々しい雲雀が少しふにゃっとなる。おれはその優しい顔も好きだ。嬉しくておれも不安を忘れて、ニコニコしてしまう。  おれは雲雀がひとりでいる時をあまり知らない。今日だって、特に仲がいい友達の一人、飛鳥くんやお友達数人に囲まれている。みんなおれを見るとちょっと笑うんだけど、飛鳥くんだけは眉をぎゅっと寄せて、大きな目もぎゅっと細めていた。目が悪いのかな?  飛鳥くんの大きなつり目に、アイラインを引いたみたいなクッキリとした目元はまるで猫ちゃんだ。運動した後だから、頬が少し赤いのがまた可愛い。よく色が変わる髪は今は濃い金色で、おでこを出しててっぺんで結んでいた。身長はおれと同じくらいだけど、候補生たちは背が高い人が多いから低く見える。それも個性だよね。    そうだ。飛鳥くんなら、雲雀と組めるんじゃないかな。  クールでかっこいい雲雀とホットで可愛い飛鳥くん。いいかもしれない。  飛鳥くんは歌がすごく上手いんだ。顔は可愛らしいのに、歌声が低くてかっこいい。雲雀に負けないくらい輝く才能がある。雲雀とも仲良いし、「いいやつだよ」って雲雀も言ってた。  ワクワクした気持ちで二人をじっと見ていると雲雀が飛鳥くんの頭に手を乗せていた。ゆっくりと撫でて、話かけている。何を話しているのかは聞こえないけど、雲雀は、とても優しい顔をしていた。おれと一緒にいる時みたい。    ……あれ……?    考えていたことが全部真っ白になった。スポットを浴びて歌う二人を想像していたのに、全部真っ白になって掻き消えていく。  あれ? あれ? と戸惑っていたから、後ろから近づく人に気づかなかった。 「はーるの、くん!」 「ひゃぁっ!?」 「んぐふっ!!」  肩を掴まれて、思わず飛び上がった。振り向くと、優介くんがいた。  優介くんも雲雀と仲のいい友達の一人だ。茶色のまあるい瞳をさらにまんまるにして、涙を浮かべて、鼻から下を押さえている。おれが飛び上がった拍子にぶつかっちゃったみたいだ。 「ご、ごめんね?! 怪我してない?」 「だいじょーぶ……俺こそ、驚かしてごめんね……」  優介くんは顔をあげると、まだ痛みで涙目なの に、にこり、と笑ってくれた。優しい。茶色くて丸い目も、栗色の髪も、優しさの具現化なのかもしれない。大きくてほっこりする、森のくまさんみたいだ。  それなのに、顔に傷がついちゃったらどうしよう。 「……何してんの?」 「あ、ひばり!」  戸惑っている間に雲雀が来ていて、優介くんを訝しげにじっと見ている。 「あのね、おれがぶつかっちゃってね、それでね、」 「へぇ、大丈夫か?」 「平気平気」  優介くんが笑って答えたけど、雲雀はカバンからタオルを取り出すとどこかで濡らして、すぐに戻ってきた。優介くんに渡して「使ってないやつ、返さなくていいから。一応冷やしとけば?」とだけ伝えて、オロオロしてるおれを引っ張る。 「ほら、帰ろう。腹減ったな、コンビニ寄っていい?」 「え? う、うん」 「じゃあなー優介。お大事に」 「優介くんごめんね、またねー」  優介くんは雲雀のタオルを見つめてぽややん、とときめく乙女の表情をしていた。  けれど、はっと我に返って、また笑って、手を振ってくれた。やっぱり少し、鼻が赤かった。

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