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結成まであと1年 6
おれはきょとん、として雲雀を見つめた。少し考えてから、笑みがこぼれる。
「ふふふ、またぁ?」
くすくすと笑うと、雲雀も笑った。
「これもだめ?」
「ううん。いいよー」
「じゃあ、ほら。おいで」
「おれのベッドなのに」
小さく笑いながら、雲雀の隣に潜り込む。少し大きめのベッドは二人で普通に寝ても十分ゆとりはあるのに、雲雀はおれを自分の腕の中に抱き寄せた。「落ちちゃうよ」って。
二人きりの時の雲雀は少し表情や雰囲気が緩くなるけど、スキンシップも多くなる。こうしてベッドの上でくっつくのも、二人きりの時だけだ。おれの体があったかくて、固くなくて、大きさもちょうどいいって言ってた。
抱き寄せた後は、頬と頬を擦り寄せたり、首筋に顔を埋めたりしてくるので、少しくすぐったい。でも、暖かくて気持ちいい。
それくらいなら、いいんだけど。
「……んっ……」
雲雀の唇が耳元から首筋を這う。身動ぎすると、浴衣の裾が捲れて、雲雀の手がするりと入り込んできた。太腿を撫でる手は、内腿をふにふにと柔らかく揉んでいる。かと思えば、少し緩んではだけてしまった襟元からも手を入れて、平べったい胸を這いながら少しずつ肌をあらわにしてしまう。
「んぅ……、あっ……! ひばり、待って、だめ……」
「ん?」
横に並んで寝ていたはずなのに、いつの間にか上に覆い被さっていた雲雀がベッドに手をついて、顔を上げる。おれは胸元がはだけて肩まで浴衣が落ちて、下も太腿の付け根近くまで捲れてしまっていた。隠しておかなければいけない大事なところも見えてしまいそうで、頬が熱くなる。
「もー……脱げちゃったら恥ずかしいよ……」
「ああ、ごめんな」
おれがもたもたと浴衣を直していたら、雲雀がテキパキと手伝ってくれて、恥ずかしいところは全て隠れた。きっちりともとに戻ったわけではなく、少し緩くなっている。
「これでいい?」
「う、うん……ありがとう……」
「いいよ」
「じゃあおやすみ……」
「うん、おやすみ」
「……ひゃあっ!? ま、待って!」
「ん?」
雲雀がまた覆い被さって、直したばかりの裾に手を突っ込んだから慌ててとめた。今度は裾を捲れないように器用に手が滑り込んできたからびっくりした。
なんだか変だ。
くっつくのもいっしょに寝るのも好きだけど、どうしてこんな風に触るんだろう。
肌が柔らかくてすべすべで気持ちいから、とか、暖かくていい匂いがするから、とかって雲雀は言っていたけれど、やっぱり恥ずかしい。くすぐったくて、暖かいけど、ゾクゾクと体が震える。
わからないけど、こんなことしちゃいけない気がした。雲雀だからいいかなって思ったけど。
黙っていたら、雲雀がおれの太腿をすすす、となぞって、お尻と太腿の境目をふにふにとくすぐった。
「あぅっ……! ま、まって、だめっだめだよぉ」
「なんで?」
「え?」
イヤイヤ、と首を振っていたのをやめて、雲雀を見上げる。雲雀は首を傾げて微笑んでいた。
雲雀が不思議そうな顔をしているから、おれが言ってること変かな、と不安になる。
「怖い?」
「えっ……? こ、こわくないよ……?」
「痛い?」
「……痛くない」
「じゃあ、嫌?」
「ううん、嫌ってわけじゃ……、……あ、あれ……?」
おれはわけがわからなくなってしまって、思わず雲雀を見つめた。雲雀は優しく頬や頭を撫でながら、またゆっくりと繰り返した。
「俺が触るの、嫌じゃない? 気持ちいい?」
「……うん、気持ちいい……」
「痛くなくて怖くなくて、気持ちいいだけなのに、何がだめなの?」
「……だめじゃない……かも……?」
「だめじゃないよ。大丈夫だよ」
「だいじょうぶ……」
ぐるぐると混乱してぐちゃぐちゃになった糸を、一つ一つ丁寧に解かれていくみたい。恥ずかしさと得体のしれない感覚から逃げてしまいたかったけれど、暖かく満たされてほっとする。
雲雀が大丈夫っていうなら大丈夫なのかなぁ。
雲雀に触ってもらうと、暖かくて気持ちよくて、ちょっとくすぐったい。
……でもやっぱり恥ずかしい。
「は、恥ずかしいよ……」
「どうして? 俺しかいないよ。今度は捲れないように気をつけるし、大丈夫」
「……大丈夫?」
「大丈夫だよ」
「……大丈夫……」
雲雀の言葉を繰り返すと何故かほっとした。力を抜くと、雲雀はおれに覆い被さって、またたくさん触ってくれた。くすぐったいと思っていたけど、気持ちいいかもしれない。
雲雀がそう言うなら、そうかも。
逃げなきゃって思っていたけど、逃げなきゃいけない理由なんてどこにもない。
逃げるって何から? 雲雀から?
そんな必要はないはずだ。雲雀はこんなに優しいんだもん。
雲雀に触ってもらうと暖かくてちょっとくすぐったいけど、気持ちいい。それだけだ。怖くないし痛くない。嫌じゃない。だから大丈夫。
恥ずかしいけど、雲雀にならいいや。
「大丈夫だよ」って囁く声が柔らかいから。
だいじょうぶなんだ、と安心して、いつの間にか寝ちゃってた。
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