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結成まであと1年 11

 時計の針がチクタクチクタク。  しばらく時間が経ったけど、雲雀の力が少しも弱まらなくて、おれは困ってしまった。  それでも、ぎゅうぎゅうっと抱きしめられていると、暖かいと言うよりも熱くて、力強さはだんだんと心地良くなってきて、身を委ねている。 「……えっと、これからよろしくね」 「よろしくな。……はぁ――」 「え? あ、ああっ」  雲雀がおれを抱きしめたままベッドに倒れ込むと、ベッドに手をついて顔を上げた。 「今日一日、しんどかった。逃げ回るのはやめてくれる?」 「ご、ごめんね?」 「でもよかった……。嬉しいよ」  雲雀がほっとしたように微笑んで、おれは今日一日のことをすごく後悔した。反省もした。もう二度と、逃げ回ることはしない。何があってもちゃんと向き合って、ちゃんと話をするんだ。  だから。 「……あ、あのね、雲雀。ひとつおねがいがあって……」 「なに? 何でも聞くよ」  雲雀は覆い被さったまま、おれの髪を大切そうに撫でる。少し緊張していたおれは、優しくて暖かい手に余計な力が抜けていった。 「おれにちょっと時間をくれない?」 「……やっぱり悩んでる? いいんだよ、焦んなくて」 「そうじゃなくて、やるならしっかりやりたいの」 「……?」  雲雀は首を傾げているけど、じっとおれの次の言葉を待ってくれる。 「……今までアイドルとしての勉強してなかったから、これから頑張ってみる。雲雀の隣でも恥ずかしくないように。……だからちょっとだけ時間をください。おれ、ちゃんと雲雀の隣に立ちたい」  ボイストレーニングにダンスレッスン。アイドルになるために、学ばなければならないことはまだまだいっぱいあるかもしれないけど、雲雀が選んでくれたからというだけで隣にいるのではなく、選ばれなかった人が納得できるようなアイドルになりたい。  雲雀と見つめ合って数秒、雲雀は目を細めた。 「……陽のそういうところ、好きだよ」  雲雀の顔がゆっくり近づいて、ちゅ、と小さな音と、頬に柔らかい感触。  キスされたんだ、と気付いたのは、首筋にも同じ音と感触を感じた時だった。そのまま首筋にすりすり、と擦り寄って、唇を這わせている。くすぐったい。ジタバタ、ともがくけれど、雲雀の足がおれの足と足の間に入って浴衣が押さえられているから、うまく動けなかった。今までは、昨日みたいに家に二人きりの時にしかこんなことしなかったのに、どうしてだろう? 「あっ、んんっ……! ひ、ひばり? きょう、みんないるよ……?」 「そうだな」 「あんっ」  いつの間にか浴衣がはだけて、裾も捲れてしまっている。胸を撫でたり、太腿を撫でたりされると、それに合わせて体がびくびくと震える。背中がゾクゾクするし、急に触られるとびっくりして、声をあげてしまった。  なんか変。顔が熱い。 「あっ、んっ、み、みんなが、いないときだけじゃないの?」 「だってこれからいっしょに頑張るんだろ?」 「う、うん……?」  首筋を甘噛みしていた雲雀が顔を上げる。にこりと笑っているのが不思議で、おれは首を傾げていた。 「だったら、今までよりもっともっと仲良くしなきゃ」 「なかよく? 今よりも?」 「そうだよ。どこでも一緒なんだから」 「……そっかぁ」  そうだ。学校では雲雀は特進クラス、おれは普通クラスで棟も違っていて、養成所でも学んでいるクラスが違ってて、雲雀は時々仕事に行っちゃってた。だけど、今度からは養成所や仕事でも雲雀と一緒にいられるんだ。  ふわふわとした気持ちでいっぱいになって、頬がまた緩む。雲雀も柔らかく笑い返してくれた。 「嬉しい?」 「うん♡」 「じゃあもっと仲良くしよっか」 「うん♡ 仲良くする♡」  雲雀は昨日よりもいっぱい触って、いろんなところにキスもしてくれた。柔らかくてくすぐったくて、ケラケラ笑ってた。楽しかった。    いっぱい仲良くした後は、体が火照って浴衣も乱れたけど、ふわふわくらくら気持ちいい。 「いっぱい仲良くするってこんなに気持ちいいことなんだー。知らなかったなぁー」 「そうだよー、みんなには秘密なー?」 「うん♡」  秘密? なんでだろう?  不思議だったけど、おれはしっかりと頷いた。雲雀がそう言うなら、きっとそういうものなんだ。   「……陽?」 「なぁに?」 「……あのさ」 「うん」 「……ほんとに気持ちよかった……? 嫌じゃない? 大丈夫?」 「?? ……うん♡ 気持ちよかった! もっと仲良くしようね♡」 「……おう……」

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