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マックside "Phantom"

 「なに? 俺の顔になんか付いてる?」 そんなことを思い出していたら右手に水の入ったコップをカクテルように持って、苦笑いをするジョニーがいた。 「いやぁ、相変かわらず綺麗な顔をしてんなぁって」 感動したわとため息を漏らすと、ジョニーはクスッと笑う。 こいつもクールな顔立ちのくせに、笑うとクシャッとなるから、ギャップやな。 「マックも綺麗な顔やで?」 コップを人指し指でトントンと叩いてから、ジョニーは呷る。 喉仏が大きく動いて男らしいな。  俺も肌は白いから、よくロシア人と間違われる。 工場の時は金髪やったから、初対面の人には 英語で話しかけられとったし。 そんな話をよく由希仁にすると、むっちゃ笑ってくれてたな。 今はやせとるけど、昔は太っとっとったし。 だって、鍋はごまだれやん。 やせとる奴はポン酢なんやって。 アーヒナルとエース、ジャッキーによくバカにされてたわ……なんかむっちゃ腹立ってきた。  「なに~もう。俺に惚れた?」 ニャニヤするジョニーに怒りが爆発した。 「俺は他に好きな奴がおるんじゃ! ボケェ!!」 あかん、3年分くらい怒ってもうた。 「そんなに怒ることちゃうやん」 ふふぷと笑い、身体を震わせるジョニー。 「まぁ、俺もおるし」 落ち着いた声で言ったけど、少し掠れとった。 ああ、パンドラの箱開けてもうたわ。  「忘れとったわ。今日の収穫を報告してくれ」 話を逸らすように、本題に移る。 「あそこ、真っ黒くろすけやったよ。表は経営コンサルタントってなってるけど、裏では臓器も人も売買する悪徳企業。関わった中小企業を潰して従業員を商品にしてるってさ。逆らったら、ヤクザを使って殺すとか」 残った水をグイッと飲み干し、コップを軽く洗ってから逆さに置くと、こっちに歩いてきた。 「あとは専属の殺し屋を抱えてるって話があるよ。名前は"Phantom"」 二コッと笑うけど、目は笑ってへんかった。 「有段者か?」 俺は一応、確認する。 メンバーにボクシングと少林寺拳法はおるし、他の奴 も護身術は軽く出来るから、大丈夫やけど。 「殺し方が多様らしいからたぶんね。若い男らしいよ」 全員潰されるかもしれへんってことか……覚悟だけはしておくわ。  「有段者……男……」 俺はぶつぶつ言いながら、立ち上がる。 「マック?」 ジャケットを着ながら、不思議そうについてくるジョニー。 「ちょっと資料、見直してみるわ」 「おっけ~。俺はシャワーしたら寝るから」 ワックスでカチカチの頭をジョニーは苦笑いを浮かべて撫でる。 倫子さんの初恋の人に似せるためにやっとるんやて。 ほんにな。 堪忍な。

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