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③
僕は保健室の中に半ば無理矢理押し込まれて、逃げ道は無くなった。
「熱、測ろうか。」
保健室の先生は珍しい男の先生で眼鏡と白衣がよく似合うイケメンでスタイルのいい人だと同じクラスの女子が言っていた。隠れたファンがいて、仮病で先生に会いに行く人もいるらしい。たしかに、背は高い。
体温計を差し出されては拒むわけにもいかなくておずおずと受け取る。
「風邪?それとも何か言いにくいこと?」
「......風邪です。」
全てを知っているような物言いに一瞬嘘をつくことをためらった。
「............そう。」
少し長い沈黙の後、たったそれだけ返して、体温を測り終わったことを知らせる音が鳴った。
「マスク外せる?」
僕はマスクを外す。
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