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告白 3
それからは・・・本当に何もなかった。
僕は気になってしまってアイツを時折見つめてしまったけど、アイツは僕の方へ目をやることさえなかった。
いつも通り、口元に皮肉な笑いを貼り付けて、誰とも話もせす、授業も休み時間も関係なく、なんか本を読んでいた。
多分漢字ばかりだから中国語なんだろうなって本、だったり、何語か分からないけどアルファベットで書かれた本(僕らの学校では英語どころか日本語すら危ういからそれが英語かどうかすらわからないんだ)を読んでいる。
先生達も何も言わない。
何でも先生達の誰よりもアイツは賢いんだとか。
それに、アイツがこの底辺校(ただしスポーツはレベル高い)に来たのには、この学校の偉いさんとアイツはなんか関係があることかららしい。
だからアイツは体育の授業すら免除されている。
そうだろう。
アイツあんなに細いのに動けるんも不思議やもん。
スポーツなんかできるはずないよなぁ。
とか、思ってしまう。
まあ、腕立ても懸垂も片手でするスポーツ馬鹿の僕らと一緒にしたらあかんやろうけど。
・・・なんの為にアイツ、この学校に来たんだろ。
本を読むだけなら・・・・別に学校じゃなくてもいいのに。
何にも知らない。
噂しか知らない。
僕が好きなこと以外は。
声だけは知った。
顔は知らない。
隠されてる。
何故僕が好きなのかも知らない。
それも教えてもらえないから。
興味を持ってしまうよね。
気になるよね、どこが好かれたのかとか。
でも、応えられない以上は不必要に近付くべきではないことくらいは僕だってわかってる。
でも、気になった。
そうは言っても。
気になっても。
どうすりゃいいねん。
元々誰とも話さへんヤツや。
近づいても、そんなん・・・好きや言うてくれてんのに応えられないのに友達なろ、言うのも酷い話やろ?
告白して嫌われて諦めたかった言うてたんやで。
もうその発想からしてわけわからん。
そもそも、恋ってのが僕には良くわからへん。
可愛い女の子とデートしたいし、出来ればやりたい。
それが恋やないことくらいはわかる。
笑いながら泣いとった。
あれは何なん?
なんか、こう、切ないんやけど。
僕に向けられたもんやと思うと、正直引くけど、なんか、こう、わからんけど切ないやん?
僕はあの日からアイツが気になってしまった。
気になる。
見てしまう。
アイツの住所とかそんなん調べてしまったりして、名前そんな字かくんやとか思ったりして、なんでか朝走りに行く時とかになんでかアイツの家のちかくまで走りに行ったりして。
調べれば調べる程、誰もアイツのことなんか知らへんし、あの噂以外、情報が何一つないことに歯噛みした。
せめて、なんか知りたいと思ってしまったんや。
アイツ、ホンマに僕のこと好きなんか?
だって僕こんだけアイツ見てんのに・・・アイツ全くこっち見てへんやん。
まあ、そんな日々がなんと2月続いたわけで。
さすがに秋から冬にちかづくこの季節。
僕は自分の方がアイツに惚れてるみたいな行動をしていることにやっと気付いたわけで。
そこで、僕もアイツを見るの止めようと思った。
あれはアイツの気紛れやったんや。
嘘やなかったやろうけど、なんかまぁ、一時的なもんで、アイツの中ではすっぱり気が済んだんやろ。
ほんなら、友達とは言わんでもツレ位にはなれんかなぁと、何故か未練たらしいのは僕の方で。
でもどうすればいいのかわからなくて、このまま卒業して終わりか、と思った。
僕は進学しないでバイトしながらボクシングして、なんか面白いことを見つけたいと言うあやふやな進路を決めてんいたし、アイツは有名大学に行くことがもう確定していた。
アイツは落ちへんやろ。
僕は諦めた。
何で失恋みたいな気分になってんのかわからへんけど、諦めた。
しゃあないやん。
でも、なんで僕がフラレたみたいになってんの・・・。
アイツ、一度位僕の方見たらええし、一度位、朝走る時とか家の前とかで顔合わせたらええやん・・・。
そしたら僕だって、話しかけられるのに。
そんな深い意味なんかなく。
なんか何で僕が切ないねん。
あんまりこっそり見過ぎて、その細いシルエットだけで誰かわかるようになってしまったんは内緒や。
卒業して、終わり。
もう見ることもないやろ。
そう思っていた頃だった。
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