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告白 12

 僕はアイツの枕元に座っていた。  僕は夢が続けばいいと思っていたけど、同時に早く目覚めたいて思ってた。  アイツに「好きや」言いに行こ思てたから。  でも今はもう少しだけ目覚めないで欲しかった。  もう少しだけ、憎まれるのを遅らせたかった。  僕は震えてアイツが目覚めるのを待っていた。  僕はアイツの家にいた。  家は知ってた。  家の前まで毎朝走っとったし。  アイツは「あの家の子」で有名やったし。  抱えて家まできた。   破ったシャツもパンツも堕ちてたアイツのカバンも、奪っためがねも全部もって。  その身体の細さと軽さに泣きながら運んだ。   こんな身体に僕は何したんや思いながら。  まだ朝早いから、誰もいないのがありがたかった。  アイツのためにも、誰にも見られたくなかった  アイツの家の人に全て打ち明けて、好きなようにしてもらおうと思った。  僕の妹がこんな目にあったら僕はソイツを殺す。  だから殺されていい、そう思った。  でもインターホンを押しても誰も出てこない。  デカい門を押したら開いたのでそのまま入った。  荒れた広い庭をぬけて・・・玄関についた。  玄関の戸は不用心にも開け放なしだった。  僕は声をかけたが誰も返事がないので勝手に入った。  とにかく、アイツをこのままにしたくはなかったのだ。  広い家だった。  声をかけてまわったけれど、誰もいない。  奇妙な家だった。  綺麗に掃除されてるんだけど、声をかけて開ける部屋の全てに本が所狭しと置かれている。  全て和室の古い日本家屋だけど、まるで図書館のようだった。  本棚しかない。  一つの部屋だけ、本以外に文机と座椅子、それに洋服箪笥、そして布団畳んであったから・・・ここがコイツの部屋なのだとわかった。  その部屋以外は全く人の住んでる気配がなかった。  コイツ・・・一人暮らしなんか?    僕はアイツを畳の上に置いた。  ・・・綺麗にしてやりたい、そう思った。    僕ので汚れてる。  目覚めたら・・・不愉快やろ。  せめて・・・綺麗にしてやりたい。  僕は洗面所から勝手にタオルをもってきた。  そして台所の湯沸かし器で、あつい蒸しタオルを作った。  風呂場から洗面器も持ってきた、  そこにお湯も入れて運ぶ。      僕はまたアイツを裸にした。    少し前は見るだけで欲望でたまらなくなった身体は  今度は罪悪感でたまらなくなった。  細い真っ白いな身体は相変わらず、僕の欲望に火をつける。  でも、そこにあるたくさんの噛み痕、傷跡は・・・全部アイツの痛みや。  僕は泣きながら拭いた。  こびりついた精液も拭いた。  ベタベタな唾液も拭いた。  お湯でタオルをすすぎ、綺麗に拭いた。  でも、噛み痕や傷跡、そして吸い痕は消えない。  アイツの心にもこんな傷跡が出来てしまったんやろか。  優しく優しく。  その身体を拭いた。  優しくしてやれなかったから。  肉のないわき腹を、また舌で一本一本浮いた骨をなぞりたかった。  真っ白なこの身体をまた味わいたかった。   でも、もうあかんのや。  そっとひっくり返して、そこもふいた。  どうかと思ったけど・・・でも精液入ったままやったらあかんやろ思って、そっと指をいれて掻き出した。  指を入れたらアイツが呻いた。  でも、目をさます様子はなかった。   指を動かす度に呻く。  暖かい穴。  気持ちいい穴。  ヤらしい穴。  少し切れてて、赤く腫れてて・・・また舐めて癒したいと思ったけど、もうあかんのや。  欲望と悲しみと後悔が同時にわきあがる。    全身を丹念に拭き、箪笥からパジャマをさがして着せて、布団を引いて寝かせた。   そして待った。    目を覚ましてアイツが僕を嫌うのを。憎むのを。恨むのを。  つらい・・・。  つらかった。  泣かせ、苦痛で顔を歪ませた。  それが楽しかった。  気持ち良かった。  そんな僕が僕の中にいた。  「夢」だ、そう思っただけでその僕はコイツをめちゃくちゃにした。  悲鳴が苦痛が恐怖が楽しかった。  痛みにおののく白い身体が。    怯えて涙に濡れる瞳が。  食いしばり貫かれる痛みを耐える口元が。  恐怖に締まる穴が。    全部心地よかった。  僕はイカレてた。    リングの上では別人。  そう言われたし、自分でもそう思ってた。  試合で人を殴るのは何よりも・・・面白かった。  凶暴で、暴れまわる獣は試合の時だけ出てくると思ってた。  何のことはない。  ソイツはいつだって僕と一緒にいたんや。  僕の本性こそそれやったんや。  「リングの上」やからいい。  「夢」やからいい。  許される場所さえ与えてやれば・・・僕は獣になる。  僕は獣だ。  僕は・・・コイツを引き裂いた。  もう何時間そうしてたんか分からへん。  僕は膝を抱えてその寝顔を見ていた。  綺麗な顔や。      そんな顔やったんやな。     皮肉な表情さえ消えたなら、綺麗な正対称な顔は触れて確かめたくなるような造型だった。      触れられへん。  もう触れられへん。    泣けた。         アイツが目をぼんやりと開けた。    僕は飛び起きた。    「大丈夫か!!病院行くか!!」   僕は声をかける。  違う。  違う。  そうやないやろ。  大丈夫なわけないやろ。  「お前・・・」  アイツが僕を見て顔を歪めた。    ああ、わかってた。分かってたけど。  僕は号泣した。   声をあげて泣いた。  なんかもうめちゃくちゃになってた。  「ごめんなさい!!」  畳に頭を叩きつけた。  こすりつけた。   こんなんで許されるへんのは分かってる。  「警察でもどこでも行きます。死ね言うんなら死んでもええ・・・なんでも言うてくれ!!」  僕は絶叫した。  「・・・警察?アホぬかせ。そんな大事に出来るかい」  アイツは冷たく言い放った。    アイツは身体を起こそうとして顔を歪めた。  「痛っ・・・」  呻くアイツに僕が耐えられない。  痛いんや、僕が押さえつけたりしたから骨とか折れてへん?  「だ・・・大丈夫か?」  僕はあわあわとアイツを抱き起こそうとして、触ってはいけないことを思い出して弾けるように離れて、でも心配でぐるぐると回る。  「大丈夫なわけあるかい!!・・・好き放題しやがって!!」  アイツが吠えた。  おっしゃる通りで僕はまたひれ伏す。     「・・・どうやってここへ?」  アイツがだるそうに言った。    「門も玄関も開いてたから勝手に入りました」  僕はひれ伏したまま答えた。  「開いてた?・・・ふうん」  アイツは不思議そうな声で言った。  僕はそのままひれ伏す。      「死ね」と言われたら死のう。  こんな罪悪感を抱えて生きていけない。  こんなの嫌や。    自分したことやけど・・・嫌すぎる。  「お前・・・変態なんか」  意外な切り口からアイツは切り出してきた。                    

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