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狭間 2
「・・・離れて歩けや、わかってんな」
門を出るとアイツが言った。
「ええっ・・・一緒に行く意味ないやん、それ」
僕は抗議の声を上げるが、アイツはぷいとそっぽをむく。
ダメなのだ。
僕は溜息をつく。
付き合った翌日から僕は朝走りに行って、それからアイツの家に寄って一緒に学校に行っている。
さすがにあの日は大騒ぎになった。
僕が朝走りにいったまま行方不明になったからや。
学校サボったし。
成績はギリギリ卒業できるかな、の、底辺の僕やけど、学校だけは無遅刻無欠席やったから、大騒ぎになっとった。
でも、アイツが「学校ちかくで倒れた自分を助けてくれた」言うてくれて上手く収まった。
ホンマはアイツが寝込むほどに、アイツを犯しまくってたんやけど。
これに関してはどうすりゃいいのか。
本当に。
罪悪感はハンパない。
それでも次の日からアイツと一緒に学校に行くようになった。
僕の家はアイツの家からかなり離れているがそれに何の問題が?
朝一時間程走りにいって、それから家でシャワー浴びて、そこから自転車でアイツの家に行き、二人で歩いて学校へ行く。
一緒に学校に行くのが嬉しい。
その為になら、前より早く起きることも、自転車でコイツの家まで来ることも苦にはならない、全く。
それに初日に早よ迎えにきすぎてもうたんやね、嬉しすぎて。
そしたらな、「・・・飯食っていくか?」ってアイツが言うてくれて・・・朝ご飯食べさせてもらっちゃったんやね。
アイツの手作りやで。
味噌汁、鮭、玉子焼、ご飯、漬け物。
デザートにリンゴまでつけてくれた。
めっちゃ美味しかった。
どうやら冷蔵庫の作り置きの総菜とかもアイツが作ってたみたい。
それに、一人暮らしなんや、ホンマに。
「じいさんとすんどることになってるけどな、もう三年位帰って来てへん。たまに電話はあるから生きとるやろ」
アイツは淡々と言った。
仕事か何かでおじいさんはずっといないらしい。
「ずっと一人なんか」
僕は心配になって聞いた。
「・・・まあ、そうやな」
アイツは少し考えて言った。
15才からひとりぼっちで・・・。
なんか切なくなった。
それから毎日、美味い朝ご飯食べさしてもうてんねんけど、そっから一緒に通学してんけど。
絶対一緒に歩いてくれへんねん。
「恥ずかしいから、離れろ」
と言って、一メートル以上は近寄ったらあかん言うねん。
一緒に通学って・・・こんなんちゃうやん。
さすがに男同士やし、手繋いでとかはしたいけど、目立つから嫌や言うのはまぁわからんでもない。
でも1メートルも離れたら、話かけるのも大変やし
「話かけるな」
言われてるし・・・。
僕が思うてたのはこんなんちゃう・・・。
でも一緒に朝ご飯食べれるし、美味しいし、今日は門を出る前我慢出来なくて後ろから抱きしめたら、逃げたりせんではくれた。
でも。
震えとった。
細い肩が背中が震えとった。
怖いんや。
僕のせいや。
胸が痛んだ。
優しく抱きしめただけや。
絶対もう酷いことはせん。
優しく髪を撫でた。
顔もあの日以来髪やメガネに隠されてもうて見てへんけどええ。
今はええ。
僕のことこわがらんなるまではええんや。
僕が悪いんやし。
「外出たら離れろや」
アイツが震えながら言った。
「うん。・・・お前本当に可愛い」
僕は心から言った。
アイツの首筋が真っ赤になった。
「そう言うこと言いな!!」
アイツが小さい声で言ったのがますます可愛かった。
しばらく堪能させてもらった。
そして、渋々離れた。
「先に歩け!!」
アイツが怒鳴る。
「一緒に歩きたいねんけどなぁ」
僕はぼやきながら歩きはじめる。
アイツは門を閉めた。
アイツは門も玄関も鍵をかけない。
不用心すぎる。
でもアイツに言わせると
「出入りさせなあかんのでな」
と言うことらしい。
なんか業者さんがおるんか?
「セキュリティーもソイツらがする」
とのことらしい。
でも、学校終わってジムに行くまで僕この家におるけど見たことないけどな?
そう、僕はこの家にすっかり入り浸っているのだ。
もうすぐ付き合い始めて1ヶ月。
僕は幸せいっぱいなのだ。
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