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狭間 3

 付き合って思った。  コイツ可愛い。  めっちゃ可愛い。  顔とか身体とかがめちゃくちゃクるんはもうよう知りすぎるくらい知ってんねん。  だからむしろ、隠してくれてる方がええんよ。  安心できるからね、僕が一番ヤバいからね。  僕は獣やからね。    でも一番可愛いんは・・・性格や。  めちゃくちゃ口悪い。  口開いたら辛辣な言葉しか出てこん。  ホンマに僕のこと好きなん?  何回も思ったほどや。    でもな、可愛いねん。  僕が美味しい言うたらな、じゃことネギ入りの玉子焼、絶対朝つけてくれんねん。  僕が美味しい言うたらな、めちゃくちゃ嬉しそうに笑うねん。  僕が可愛い言うたらな、指先まで真っ赤になるねん。  僕が朝来るの門のとこで待っててくれんねん。  「新聞取り組りに来ただけや」  とか言いながら。    可愛いやろ?  可愛いすぎるやろ?  僕男と付き合えへん思ってたけど、意外と大したことやなかったわ。  めっちゃ勃つし、めっちゃ可愛いねんもん。  ただし、セックスはあれ以来してへん。  ゆっくりや。  ゆったり、アイツが僕のこと怖がらんなってからや。  触ったりしたら震えるねんもん。  まだ、あかん。    でもええ。  僕の恋人やもん。  ゆっくり、ゆっくり・・・行きたいねん。  やらかしてもうた分。  一緒に学校行って、今は引退して部活ないから一緒に帰って(ただし、一メートル以上は離れる)、アイツの家からジム行って、ジム終わったら、たまにアイツの家によって晩飯たまに食べさせてもらって・・・、家に帰る。  そんな毎日を幸せいっぱいに僕は送っていた。  でも。   「何で一緒に並んで歩いたらあかんのやぁ」  僕は泣きながら言う。  学校の帰りやった。  学校では口きいたらあかんて言うし、一緒に帰るんも、校門の前で待っててアイツが通り過ぎていったらその後をしばらくしてつけてこいって言うし。  僕は言われた通り一メートルあけながら泣きながら抗議する。  「泣くな。キモいんや!!」    アイツが嫌そうに怒鳴る。  僕はグズグズと鼻をすする。  僕ぐらい強いと何をしても、誰も表だっては何も言わない。  僕は頭が悪くても喧嘩はめちゃくちゃ強いウチの学校の連中の中でも多分、喧嘩したら一番強い。    したことないけど。    誰も売ってこんもん。  僕は確かに優勝こそできなかったけれど、アマチュアトップボクサーやったし、僕が負けた相手より僕が弱いわけではないという自覚はある。  競技者やないんや。   僕は。  ボクシングと言うのは知的ゲームなので、僕はそこが苦手なだけなのだ。  僕は強い。  ので、僕はわざわざ男らしくしようともしないまま、高校生になった。    格好だけ男らしくしてりゃ強なれるほど、甘い世界にはおらんかったからね。    「一緒に歩いてやぁ」  僕は泣きながら言う。  「・・・みっともないから嫌や!!」  アイツに圧倒的に拒絶された。  悲しい。  みっともないって・・・好きな子に言われた・・・。    ボロボロ泣いてたら、アイツが困ったような顔をして振り返る。  「・・・泣くなや、頼むから」  小さい声で言われた。  あ、心配してくれている。  途端に僕は機嫌がよくなる。    「夕飯食べに来るやろ、何でも作ったる。何がええ」  甘やかすような声で言われたならもう泣いてもいられない。  「餃子がええ、あれ、めちゃくちゃ美味い」  僕は呑気に答えていた。  アイツが苦笑した。  あまり入り浸っているので、母親に「あんたバイトしてんねんから食費くらいいれなさい」と言われて、渡そうとしても受け取ってくれない。    「料理は趣味や・・・趣味に金なんかもらえるかい」  そう言われてしまう。  確かにアイツは料理は楽しそうにしている。  お手伝いは許されてない。  「テキトーに手ぇ出されたらなムカつくんや」      とのことで。  なので皿洗いとかそういうのだけでもさせてもらってるんやけど。      

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