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狭間 4

 一メートル離れて歩く。  アイツの細い背中を見つめながら歩く。  ちょっとアイツの家に荷物置かせてもらって、着替えて・・・ジム行って。  練習して帰ったら・・・餃子だ。餃子。    僕は機嫌がよくなった。  明日はバイトに行かなあかんから、朝しか会えへんけど。  今日は夜も会える。  食事だけやけど。  色々すんのは・・・またいつかね。  いつか。  そう、土日のバイトの日だけは朝しか会えへんねん。  本当はバイトが終わった後もこの家に来たいけど、自重してる。  ホンマは一緒に住みたいくらい。  「お前、オレとばっかりおってええの?友達とかええんか?」  アイツがふと振り返って言った。  ずっとつきまとってんのが鬱とうしくなってきたんかな。  不安になる。  「もともとそんなに人と連まへんし、僕。・・・おったらあかん?」  僕は聞く。  ウザイ?  「・・・別にかまへんけど」  アイツはブツブツ言った。  なんか嬉しそうにも見えた。    「なぁ・・・あのな」  僕は言いかける。  僕は来週のバイトは休もう思っていた。  てか休みとってた。  コイツとデートしたくて。     初デートや。  行く先はどこでもええ。  コイツの行きたいとこでええ。  そして、色々ゆっくり話がしたかった。  ちゃんと好きやって言いたかったし、色々聞きたかった。  何であんな時間に学校におったんか、猫の頭をした蔦はなんやったんか。  なんで僕のこと好きになってくれたんか。  僕らは話しなあかんことが色々あるはずや。  だけど言いかけた言葉は止まった。  異臭がしたからだ。      肉の焼ける匂いと、臭い匂い・・・髪の毛が焼けた時みたいな・・・。  兄貴のライターを妹とイタズラしてて妹の髪が燃えた時の匂いに似ていた。  ん、何これ?  何か不愉快な感覚がした。  ものすごくあかん感覚が。  「どうしたんや?」  僕が落ち着かなく辺りを見回したのでアイツが不思議そうな顔をした。    でも、臭いに顔をしかめた。    「・・・これは」  アイツも異常に気付いたようだった。  僕は鼻がいい。  ガソリン臭もした。  「誰かがガソリンで何かを燃やしとる?こんなとこで?」  僕は呟く。   その臭いは、そこの公園からしていた。    僕は走った。   気になったからだ。  無性に。  アイツも慌ててついてくるけど、遅いので置いていく。  僕は公園に飛び込んだ。  小さな公園だ。  ブランコの砂場、そして滑り台があるだけの。  端の植え込みの隅から、煙が上がっていた。  何かがくすぶっていた。  それが臭いの元だった。  僕はザワリと鳥肌が立つのがわかった。  なんで?  僕より先に僕の身体は警告していた。  コレは、ヤバいモノだ。    近づくな。  見るな。  だけど僕は動いた。     僕は答えを必要としていた。  あれは何や?  何なんや?  そして僕はそれが何かを確認した。  最初はぬいぐるみが燃えているのかと思った。  ・・・・でもすぐに違うとわかった。  猫だ。  焼け焦げ、縮こまった肉と毛皮。  口は最大限に開かれていた。  生きたまま焼かれたのだと・・・わかった。

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