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狭間 6
アイツが立っていた。
オレンジの炎の光は、アイツを照らすと同時に影を濃くした。
アイツの影はのびていて、まるで影自体が生き物のように見えた。
アイツは僕の足音に振り返り、驚いたように僕を見た。
「お前・・・なんで」
アイツは言った。
僕はアイツの足元のオレンジ色の炎を見た。
猫が燃えていた。
猫は座ったまま、オレンジの炎の中にいて、アイツを見つめていた。
僕はそれを見て悲鳴をあげた。
猫が燃やされている!!!
僕は上着を脱いだ。
それを猫に向かって叩きつけようとした。
炎を消してやらないと。
助かるか。
助かるのか?
それになんでアイツが燃えてる猫の前におんの?
何で?
何で?
僕は怖くて泣いてた。
でも、猫に向かって走った。
火を消してやるために。
「止めろ」
アイツが僕の身体を掴んだが、そんな非力な力で僕が留めれるはずがない。
アイツごと引きずって、僕は猫のそばにいき、上着をたたきつけた。
「うぎゃあ!!」
怒ったような声でネコ猫が泣いた。
上着を叩きつけられた瞬間、猫が跳ねた。
上着と炎をまとったまま。
上着は炎に包まれる。
黒く、焼け縮んでいく。
でも、猫は炎の中で白い毛を輝かせていた。
そして怒ったように僕を見ながら膨れあがった。
炎も更に燃え上がる。
でも・・・猫は、僕に怒ってはいても・・・炎に包まれていることは平気なように見えた。
上着は燃えたのに。
なんで?
僕は立ち尽くす。
「しゃぁっ!!」
燃える猫は僕を威嚇した。
燃えたままで。
炎の中から。
何コレ。
何?
「死んでへんのやコレは」
アイツが僕に言った。
僕はアイツを抱きしめた。
「また・・・お前・・・」
アイツか身体を強ばらせた。
ガタガタ震える身体をそれでも無理やり抱き寄せた。
手放せるか!!
「ええんや!!お前が猫殺しでも!!僕はかまへん・・・かまへんのや!!」
僕は泣きながら叫んでいた。
燃えてる猫、コイツ。
なんで猫がまだ死なへんのかは分からへんけど、たまたま偶然猫燃えてるとこにおる方がおかしいやん。
猫が勝手に燃える方がおかしいやん。
何で死なへんのかもおかしいけど。
可哀想や猫。
そやけどそやけど。
そやけど。
そやけど。
僕はお前を・・・。
ゴツン
頭突きされた。
腕の中からアイツが思い切り頭を僕の顎に叩きつけていたのだ。
痛い・・・。
「誰が猫殺しや!!こんボケが!!猫より先にお前を燃やすぞこのアホが!!」
アイツが真っ赤な顔をして怒鳴る。
へぇぇ?
違うん。
怒り狂ったアイツが僕の腕からにげようとするけど逃がさない。
非力やなぁ。
非力過ぎて・・・可愛い。
10才の頃の妹でももっと強かったわ。
まあ、その頃からアイツ男子を投げ飛ばしていたけど。
「お前の・・・お前の・・・オレに対するイメージはようわかった、離せ!!」
アイツが暴れる。
「怒らんといて。ごめんなさい。ごめんなさい。怒らへんといて」
僕は必死で謝る。
けど腕は離さない。
逃がすわけにはいかんから。
「怒らんといて・・・」
僕はキュッとアイツを抱きしめながら囁いた。
「オレ・・そんなんせん・・・」
アイツが小さく呟いた。
また傷つけてしまったんやと思った。
「ごめんなさい」
僕は一生懸命謝った。
「せぇへん」
「うん」
僕は謝ってんのに甘い気持ちになりながら頷いた。
いや、そんな場合やないって、ほんならこれはなんなん。
しゃあっ
炎に包まれた猫が僕にむかって牙をむいていた。
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