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狭間 7

 「これは何なん?ここはどこなん?」  僕はアイツに聞いた。  アイツがそれを知っていることだけは確かだった。  アイツはため息をついた。  もう怒ってはないようだったけど・・・まぁ、せっかくやし、抱きしめとこ、と思って抱きしめたままでいた。  腕の中からアイツか僕を見上げる。    アカン、にやける。  へへへ、腕の中におるんや。  「何へらへらしとんねん、キショイねん。・・・ここはな、狭間や」  アイツは言った。  アイツは僕達に近寄ろうとする猫を睨み威嚇して追い払う。  猫は後退った。  「触るなよ。火はホンモノやからな」  アイツは言った。    「狭間?それなに?」  僕は尋ねた。  「オレかて分からん」  アイツは言った。  それで終わった。  「終わり?、そんなんで終わり?そんなんあるかい!!」  僕はさすがに怒る。  いくらなんでもそれはない。  ふざけすぎや。  「アホ、わからんもんはわからんのや!!分からんから調べとるんやろが!!オレらは何代もかかってここが何なんか、そしてコレが何なんかを調べ、説明できるようにしとるや!!」  アイツに怒鳴りかえされた。  「調べる・・・?」  僕は首を傾げる。  「全くの知的好奇心というわけでもなく、必要にかられてやけどな。オレの家はこの【狭間】と名付けた空間と、そこに存在するモノ、そこが現実に与える影響について調べとんるや、ずっと」  アイツはメガネを押し上げた。  燃える猫をアイツは忌々しげにみつめる。  「こんな非科学的な存在、許されるわけかないやろう!!まだ現代科学が追いついてないだけや、絶対にコイツらの存在を解明してやるんや!!」  アイツはめずらしく熱く叫んだ。  「許せるわけあらへん。こんな理解できないもんがあってたまるか、なのにあるんや!!オレの代であかんくても、次の代では解明してやるんや!!この解明にオレの生涯はある!!」  こんなに情熱的なアイツを見たのは初めてやった。  はぁ。    僕は呆気にとられる。  「別にわからんくてもええんでは?」  僕の言葉にアイツがキレる。  「アホぬかせ!!こんなデタラメに知性が負けてんなるもんか!!」  アイツは僕の胸ぐらをつかんで怒鳴った  はぁ  その辺の熱意は全くわからんかった。  僕は車が何で動くかわからんけどかまへんで。    でも、まあ。  「こういう情熱的なお前、格好ええなぁ」  僕は心の底から言った。  アイツは僕の胸ぐらを掴んで睨んでいたが真っ赤になった。  「格好ええ?・・・オレ、オレが・・・」  掴んでた指の先まで赤くなる。    「うん・・・格好ええ」  僕はアイツをぎゅうっと抱きしめた。    何言ってんのか全然わからへんけど、生涯をかける情熱があるってのは素敵や。  素敵すぎる。  格好ええなぁ、僕の恋人は。  可愛い上に格好ええ。  「そんな・・・嘘言うな・・・嘘ばっかり言うな・・・」  アイツが震えてる。  「格好ええで?オレ夢とかないもん。したいこともないし、卒業したらフリーターしとこ思てたもん、めっちゃ格好いい」  アイツをぎゅうっとだきしめながら言う。  したいことないわけではないか。  コイツのエロいことはしたいめっちゃしたい。  結構それは生涯の夢かもしれん。  かなり真剣にそう思う。  「・・・」  アイツは黙ってしまって、下をむいて震えている。  この反応も良くわからへんな。  僕は首を傾げる。    「ほんなら何もわからへんのやな」  僕は呟く。  「バカにするな。確かなことは分からない、その原理が分からないと言っただけで・・・仮説ならあるわ!!」  またアイツが噛みついてきた。  お前の怒るとこわからへん。  「仮説ってホンマかどうかわからへんってことやろ?」  僕にだってそれくらいはわかる。  「まだ科学的に証明されてない言うだけで、どうやったらどうなるとかはある程度わかってきてるんや!!そしておそらくそうだろうみたいなことも。まだ証明の段階やないと言うだけや!!」  アイツはムキになる。  「例えばコイツ!!」  アイツは火達磨猫を指差した。  「猫の苦しみと狭間が合わさって出来た生き物やけど、こういう動ける形になったもんはヤバい」  アイツは言った。  「うん、燃えてるからヤバいよね。火傷するし」  僕は頷く。  さっき注意されたし。  「そういう意味もあるけどそれじゃない」     アイツはため息をついた。    

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