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狭間 8
「大体狭間が始まる時間や続く時間も予想は出来ているんや・・・もうすぐ終わる」
アイツは言った。
そう言っている間に公園に感じていた奇妙な違和感は消えていく。
何て云うんやろ。
本来は黒い場所が濃紺になってるみたいな・・・ものの輪郭線がいつもより太いみたいな・・・微妙に狂ったところがいつもの世界に戻って行く。
「重なっているだけや【どこか】とな。そして狭間が出来るんや。仮説やけどな・・・」
アイツは言った。
前回はコイツを犯すのに夢中で終わったらことに気付かなかったけれどこうなっていたんやな。
「ここからが大事や。離せ」
アイツは僕に言った。
僕は渋々腕を放した。
アイツは火達磨猫を見つめていた。
火達磨猫は炎の中で真っ白で、僕達に向かって牙をむいていた。
「大抵のんは狭間に留まる。狭間に迷い込んだ人間以外には害をなさん・・・」
アイツは注意深くいった。
世界がいつもの世界に変わっていく。
猫もグニャリと輪郭線を歪ませ、一瞬融けた。
消えた?
僕は思った。
が、消えなかった。
炎の中の真っ白な猫は、グニャリと溶けてから黒く染まった。
どす黒い、何故か心をざわめかせるタールのようなモノになり・・・。
炎も消えた。
真っ黒な猫になった。
一見普通の。
「なぁ」
猫はないた。
その声に名瀬かゾッとした。
赤い舌を見せ、金色の目が必要以上に煌めいた。
「・・・こっちに来たか」
アイツは呟いた。
ため息をつきながら。
猫は跳ねた。
猫が跳ねる高さじゃなかった。
僕達の身長の倍は跳ねた。
そして地面に爪を立てて膨れ上がり、のびあかった。
猫の真っ白な牙と赤い口が見えた。
牙は白すぎたし、
口の中は赤すぎた。
僕はアイツの前に出た。
コレはヤバい。
ヤバい。
僕の本能が叫んでいた。
コレは危険な生き物や。
僕の血が逆流した。
僕は構えた。
拳を握りしめる。
下がる気などない。
コイツは守る。
だが、猫はクルリと後ろをむいて・・・公園を出て行こうとした。
僕は拍子抜けしたけれど、不安になった。
「出て行こうとしてるけどええの?」
僕は聞いた。
「あかんにきまってるやろ」
アイツは言った。
その瞬間、何かが動いた。
アイツの影から飛び出してきた。
真っ白な奇怪な生き物だった。
2メートルはある。
人間のような形はしていたけれど、その身体は羽毛に覆われ、両腕の代わりに翼が会った。
足の先は鷲のような鈎爪だった。
奇怪で奇妙で真っ白で。
人間のモノと似た身体の上半身や太股の部分は真っ白な羽毛に覆われていた。
何よりも奇っ怪なのはその顔だった。
羽毛で覆われた頭部、その顔には穴しかなかった。
真っ黒な穴がいわゆる顔と言われる場所にあった。
その内側は見えない。
真っ黒なのだ。
「何やこれ!!」
怖い。
僕は叫んだ。
でも、戦闘モードに入っているから逃げない。
逃げるという選択肢は僕にはないのだ。
「喰え!!」
アイツは命令した。
それは・・・鳥のように飛んだ。
羽ばたきで凄まじい風がおきた。
僕は風に煽られながら、それを見続けた。
そして、公園の出口までいた猫をそれはその巨大な鈎爪で掴ん掴んだ。
「ゲギャァ!!」
猫は叫んだ。
猫の身体から炎があがった。
それの白い羽が燃えた。
だけどそれは躊躇しなかった。
それの首が伸びた。
まるでゴム人形のように。
グニャリグニャリと首を伸ばし、猫に頭部は近づいた
そして・・・その頭部も膨らんだ。
まるでジェルのように。
ジェルのように広がった頭部は猫を包み込んだ。
「グネャァ、ナァ!!!」
猫は鳴き叫んだ。
ぐちゅ
ぐちゅ
猫の身体は白いジェルに包まれ、そのジェルは蠢いていた。
何度も蠢き、猫がのまれて行く。
そして、ジェルがまたゆっくりと頭部の形に戻った時・・・猫の姿は消えていた。
伸びていた首が縮み、化け物はもとの姿煮もどった。
「はぁ?・・・なんで?」
僕は叫んだ。
それはまたこちらへとんできて、アイツの前に跪いた。
「良くやった。後で・・・やるから待っとけ」
アイツはそれに言った。
やるって何を。
それにそれは何?
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