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契約 7
「いや、ここは常に世界が重なる珍しい場所や。あちらでもあり、こちらでもあるんや。それにこちらに昔から住んでるコイツらもいてるぞ、少ないけど。コイツらはこっちとあっちを行き来できるし」
アイツの言葉に驚いた。
そ、そうなん?
「それにようわからんけど、コイツらは昔から自分らの王は人間から選ぶらしい。ホンマようわからんけど」
アイツも説明出来ないことになんか苛々していた。
コイツらについてはおいおい説明する、と約束してくれた。
簡単じゃないから、と。
「この町はな、狭間が発生しやすいんや。特にあの学校はな。夜とか夜明け前に行ってみれば色々見れるで。最近猫殺しがこの辺で起こってるやろ・・・頼まれてな、色々調べとるところやったんや」
アイツは学校や公園にいた理由を教えてくれた。
「誰に頼まれたん?」
僕は尋ねた。
アイツがゆっくり窓の外を指差した。
アイツの家は広い日本家屋の平屋で・・・古い古い建物やった。
アイツの部屋の前は縁側があって・・・襖を開け放ったなら庭が見えるのだけど・・・。
開いた襖から庭は見えなかった。
代わりに巨大な目がこちらをみていた。
どれくらい大きい目かと言うと、開いた襖と同じ位だった。
巨大な金色の目が、部屋の外からこちらをのぞいていたから・・・僕は庭をみることが出来ないんだ。
へぇ、
それだけ巨大な存在なんだ。
でっかーい。
なんか意識を遠く感じた。
「この人にたのまれたんや」
アイツは言った。
なので現実だと認めなければならなかった。
僕は悲鳴を上げた。
僕はアイツの見てるものを理解し始めていた。
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