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猫殺し 4

 赤と黒が怒ってる。  僕が家に入ると僕に庭に転がっている松ぼっくりを投げてきた。    松ぼっくりだけやったらええけど、そこに石とかが混じり始めた。  予想外に速いし狙いがめちゃくちゃ正確や。    アイツら・・・肉食やし、運動能力見た目の可愛いさ以上にあるやろ。  僕は走ってアイツの部屋に逃げる。  アイツがおったら、何か投げてきたり、髪をひっぱったり、つねったりしてこん。  僕、メチャクチャ嫌われてる。  ・・・なんで?    結構愛らしい外見の生き物に嫌われるるのって切ない。   なんで僕を嫌うんや・・・。  アイツは今日学校を休んでた。    昨夜もしっかりヤって、アイツを風呂に入れて寝かせてかえった。  泊まりたかったけど、おかんが「入り浸りすぎや」って怒るし、久しぶりに兄貴が帰ってくるから・・・しゃあなしで帰った。  その分、いつもより早めにセックス始めて・・・メチャクチャアイツが可愛くて。  最近疲れてて、昨日もだるそうやったけど、抱いてみたらむっちゃ喘いでたし、声がかすれるまで叫んでたし、何回も出してたから・・・満足してくれてるやろ思った。  ちなみに僕は十分満足した。  まあ、本音を言えば、噛んだりとかしたいけど我慢した。      アイツ可愛いねんもん。    可愛すぎてたまらへん。  早く・・・僕の気持ちが伝わればいいなぁ。    部屋に入ったら、アイツは布団をひいて寝込んでた。  暗い部屋で布団に寝ているアイツが一瞬・・・死んでいるようにみえた。      僕はゾっとした。  恐怖で震えた。  コイツが死んだなんて思うだけでも・・・耐えられない。  付き合いはじめて2ヶ月近く。  誰ともつるまん僕が、コイツから離れられない。  こんなん初めてや。  でも・・・コイツ痩せてないか。  僕は気づいた。  元々痩せてて肉なんかない身体が昨日さらに骨が浮いて細くなったような気はしていた。  小さな寝息を立てている顔は頬がこけてないか。  そういえば、最近・・・飯作るんもしんどそうで、でも手伝おうとしたら怒鳴れてて・・・。    可愛い恋人は死んだように眠っていた。  赤と黒がついてるから・・・身の回りの世話はしてくれとるやろうけど・・・コイツ昨夜抱き潰してからずっと寝込んでるんやないか・・・。  僕は思い至った。  この疲労困憊は僕のせいか。  優しく抱いてるつもりやった。  優しくいっぱい抱いたら、僕の気持ちが伝わるかと思って、毎日毎日一生懸命抱いとった。  コイツの体力とか全く考えてやってへんかった。    コイツが感じて気持ち良くなればいいやろうとしか・・・。  気を失ってもヤり続けた。   可愛くて、愛しくて。  僕の恋人は死人のような顔で寝ていた。  毎日のような僕のセックスで・・・死にかけていた。  僕は・・・僕は・・・。  僕なんか毎日10キロ走って練習までするこの体力と、本のページをめくる位の力しかないコイツの体力を一緒にしとった・・・。  コイツは言わへん。  僕がしたい言うたら、させてくれて、「したくない」なんて絶対に言わへん。  僕とセックスでしか繋がってへんと信じてるから。  赤と黒が僕に怒りまくっている意味もわかった。  僕がアイツを殺してたからや。    コイツをここまで弱らせてたからや。  入口のところから赤と黒が僕を睨んでいた。  僕がまたアイツを殺そうとするんじゃないかと見張りに来たのだ。    僕よりよっぽどコイツらのがアイツのことを思っていた。  「せぇへん。せえへんよ」  僕は赤と黒に言った。  赤と黒は疑い深い目で僕を見た。    「せぇへん・・・ごめんなさい」  僕は赤と黒、そしてアイツに言った。    頬を撫でた。  小さな顔は前より小さくなっていた。  「僕は・・・あかんなぁ。好きやのに、お前に酷いことしかせん」  僕は苦しくなった。  綺麗な顔。  僕しか見たことない顔。   セックスの時は誰よりヤらしい表情をみせる・・・。  僕の涙がアイツの頬に落ちた。  「上手くいかへんなぁ」  僕はつぶやいた。  僕はコイツに酷いことしかせんし、コイツに気持ちを信じてももらえへん。    でも、コイツから離れることだけはできないことを知っていた。  

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