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猫殺し 5
僕は頑張って晩飯を作ってみた。
作れへんわけではない。
大家族の一員なのだ。
ただ、アイツが喜んでくれるもんを作れる自信はなかった。
僕のご飯は家族にもあまり好評ではない。
それでも豚汁つくってと魚を焼いた。
魚を赤と黒が欲しがったから、やったら生のまま頭から貪っていて、「コイツら・・・肉食なんやぁ」と思い知らされた。
アイツ、目覚ますやろうか。
僕はアイツが目覚めるの膝を抱えて待った。
アイツは身じろぎした。
真夜中ちかくなってた。
僕はジムにも行かず飽きずにアイツをずっと見詰めていた。
綺麗なアーモンド形の目が開いた。
「・・・来たんか」
僕を見て皮肉っぽく笑った。
「飯ないぞ」
小さい声で言った。
少し悲しそうな声だった。
「僕が作った・・・食えるか?」
僕はアイツに尋ねる。
痩せてて、影が薄なって・・・あきらかに僕はコイツを殺しかけていたのだと悟った。
「お前がか?」
アイツは驚いた顔をした。
起き上がろうとするけど、身体がうまくうごかないらしい。
僕は泣きそうになる。
ここまで弱らせてた。
「持ってくるからここで食べ?」
僕が言うと同時に赤と黒がお盆にのせた食事を運んできた。
ラップかけてレンジでチンまでしとる。
最近の化け物は家電製品もバッチリか。
そういや、テレビもリモコンでつけてみてたなコイツら。
「まずそう」
布団の横に置かれた僕の作った夕飯を見てアイツは言った。
赤と黒が賛同したように頷く。
「悪かったな」
僕はため息をつく。
それでもアイツは赤から渡された箸を持って僕の作ったご飯を食べ始めた。
「味付け最悪。焼き方最低。オレが作る時に、絶対邪魔すんなよ。・・・こんな盛り付けあるかい」
趣味、本気の料理のアイツはダメ出ししまくる。
でも、残さへんかった。
全部食べとった。
「もうちょい、寝とき」
僕はアイツの食器を下げながら言った。
「泊まっていくんやろ?・・・もう大丈夫やで?」
アイツは言った。
セックスしていいと言っているのだ。
ホンマ・・・アホ。
死ぬぞ。
「泊まるけど・・・まだ寝とき」
僕は笑って部屋を出ていった。
切なかった。
僕の恋人は僕のためになら死ぬまて抱かれようとしてくれます。
部屋の外を出ると影が僕を覆った。
僕はため息をつく。
来たんか。
出ていた月を覆い隠す影。
「アイツ調子悪いから、今度にしてくれん?」
僕は一応言うてみた。
「否」
むちゃくちゃ響く銅鑼みたいな声が言った。
広い庭の3分の1を占拠していた。
脚は一本。
腕こそは二本あるが、そう、ソイツはカカシのような姿をしていた。
金色の目は一つしかなく、顔の真ん中についている。
「契約」
また銅鑼のような声が言った。
「ああ、コイツの家とお前の間には契約があるってやつな。聞いとる。でもコイツ調子悪いんや・・・」
僕は言う。
「否」
メチャクチャデカい声で言われた。
わかったことはある。
コイツらは本当に融通が効かない。
契約は絶対らしい。
お互い共に。
コイツらは約束事に命をかける。
コイツの家はこの巨大なカカシと契約をしているらしい。
その契約に従わなければならないらしい。
「お前らの方もアイツらに使われんの?」
ポケモンみたいに好きな時に使えるもんやと思ってたからびっくりして僕はアイツに聞いた。
「当たり前や。自分だけ得するような契約を結ぶわけがないやろ。アニメや漫画の見過ぎやで。お互いの利になるところてやっと契約は成り立つんや」
と、アイツは言っていた。
「・・・わかった。僕が行く。猫殺しを捕まえたらええんやろ。どこに行けばいい?」
僕は振り返り部屋の中を見た。
アイツはもう、死んだように寝ていた。
ボロボロにしとったんや。
僕が。
言葉ではなくイメージが送り込まれた。
裏山か。
城跡やな。
「わかった。すぐに行くわ」
僕が頷くと、カカシ巨人は消えた。
さて。
行きますか。
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