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猫殺し 7
怖いやん。
メチャクチャ怖いやん。
住宅地の真ん中にその裏山はあった。
正しくは城跡。
なんか町は歴史の遺跡としてここを有名にしたいみたいだけど、こんな小さな町の城跡だけを見にくるヤツなんておらんので失敗してる。
昔のお城の石垣とかが残ってる。
小さな石段があって、そこから山の上にある小さな祠まで登れるようになっている。
石段の登り口はほら、まだ道路からの街灯から照らされてるけど、ちょっと入れば真っ暗になる。
怖い。
怖いやん。
僕、こういうのあかんねん。
赤とか黒とか、カカシ巨人とかの化け物にはすっかり慣れてきとるけど、幽霊とかは別やん?
ここ、町でも有名な心霊スポットで・・・首なし武将の話とか小学生の頃から聞かされたで?
僕は震えた。
でも・・・僕がいかんかったら、調べなかったら、アイツかカカシ巨人に喰われるんや。
僕が代わりに喰われてもええけど、アイツら融通きかへんからそうはいかへんやろ・・・
あかん、脚震えてきたわ・・・泣きそうや・・・てか泣いてる・・・。
僕はベソベソと泣いてしまう自分の涙を拭った。
「死んだモノは戻らない」
アイツは言った。
アイツが言ったや。
幽霊なんかおらん。
おったとしてもそれは・・・それに似た別のもんや。
猫首草や、火達磨猫みたいに。
僕は決意を決めて石段を登り始めた。
しまった・・・懐中電灯、持って来てへん・・・。
僕はスマホのカメラのライトをONにした。
こんなもんでも、足元位は見えるやろ。
暗闇に続く石段を僕は震えながら、泣きながら登っていった。
どくん
僕の心臓が強く鳴った。
足音がしたからや。
こんな夜遅く・・・こんなとこに?
僕もそうやけど、僕が来てるんはワケありや。
ワケなくこんなとこにこんな時間に・・・おるかい。
僕はザワリとしたものを感じた。
スマホの灯りは足元の石段位しか照らさへん。
上からか?
それとも下からか?
カカシ巨人はここを調べさせたい。
それは猫殺しがここで何かしたか何かするか、何かしてるからや。
何か言うたら、猫殺しやけど。
こんなところでたまたま普通の人間に会うことの方があり得へん。
僕は耳を済ます。
下からか?
上からか?
見ても灯りはみえない。
でも足音はした。
こんな場所に灯りなく?
ソイツは・・・確実におかしい。
闇を恐れんのは・・・完全に自分が闇に染まってもうてるからやないか?
間違いない。
コイツ。
猫殺しや。
僕は僕のスマホを消した。
闇に僕も隠れるために。
コツン
コツン
上からや。
僕はこちらにソイツが向かってくるのを確信した。
はぁ
はぁ
息があがりそうになるのをこらえる。
あかん。
我慢できへん。
僕は震える。
たまらへん、たまらへん。
こんなんかなわんわ。
・・・・・・僕、暴れてええんやろ?
コイツ相手に暴力ふるってもええんやろ?
ゾクゾクしている自分がいた。
たまらへん。
リング以外で暴れても、ええねんな?
アイツのためやと思ったら、これから先の暴力にますます甘さが増した。
股間が固くなっていた。
こいや、猫殺し。
凶器持って抵抗してくれや。
ほんなら・・・ころしてもええやん?
僕の身体に力が漲った。
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