38 / 130

猫殺し 9

 ※※※残酷描写あります※※※  注意    僕は猫殺しが降りてきた場所を確かめに戻った。  一番上には祠があった。  オレンジの灯りが見えた。  祠の前で炎が燃えていたのだ。  ドラム缶で作った簡易竃だ。   炎が闇から浮かび上がっていた。  ドラム缶には鍋かかけられていて、・・・何かがぐつぐつとゆだっていた。  何なのかはわかっていた。  肉が茹でられる匂いがしたからだ。  白黒ブチの猫だった。    身動き出来ないほどに縛られていた。  見開かれた目は熱に白く変色していた。  口を開き・・・凄まじい苦悶の表情のまま死んでいた。  僕は泣いた。  泣いて・・・。  猫を鍋からつかみ出した。  メチャクチャ熱かった。     悲鳴を上げた。      でも・・・でも・・・こんなんない。  こんなん・・・可哀想や。  流石に熱すぎて・・・地面に横たえたけど、熱くて、手がメチャクチャ痛くてたまらんかったけど・・・そんなんどうでも良かった。  アイツを煮てやる。  そう思った。  僕の手の熱さ以上に猫は熱かったんや。  煮てやる。   煮て焼いて、首を斬ってやる。  猫がされたみたいに。  僕は怒りにまかせドラム缶を蹴飛ばした。    鍋が零れ、凄まじい湯気があがった。  オレンジの炎が小さく消えていく・・・。  湯気はオレンジ色に闇の中、輝いた。    湯気が土の上に横たえた猫を覆う。  くらりとした目眩。  感覚の違和感。  暗闇さえ異質な色に変わる。  「狭間」だ。    狭間が来たのだ。  おそらく、猫の苦しみに呼び寄せられて。    そして狭間でその苦しみは新しい生き物に変わる。  何かが生まれる。  僕は構えた。    首だけ猫だった猫首草みたいな無害なモノだったらいいが・・・。  湯気はオレンジに輝き猫を覆った。  猫は。  猫だったものはゆっくりと起き上がった。  猫は白い霞のようにゆらいでいた。  湯気で・・・水蒸気で出来ているのだ。  「なぁ」  鳴き声だけは猫のままだった。  猫らしく、伸びをした。  でも水蒸気でつくられた儚いからだは延びた分だけ存在が薄くなった。  小さな消えかけた炎がオレンジ色に猫を染めていた。  僕を見た。    その目だけが生々しく輝いていた。  茹でられ、白く濁っていた目は、明るいオレンジ色に光っていた。    「きしゃあ!!」  気化した猫は鳴いた。  僕を見るその目には憎悪しかなかった。  ころされた本人ならぬ本猫ではないとアイツが言ってた。  これは憎しみと苦しみから生まれた生き物なのだ。  「僕やない・・・言うてもあかんのやろな」  僕はあせる。  これは考えてなかった。  火達磨猫のこともあるんやから、考えておくべきやった。  コイツら相手にどうやって戦ったらええのん?  僕、こんなんわからん。  非常にまずい、それだけはわかった。  「きしゃあ!!」  猫は膨らんだ。  そう、そしてその分薄くなった。  わぁ、どうしよう。    そう思った。

ともだちにシェアしよう!