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猫殺し 10

 「しゃぁっ!!」  猫が飛びかかってきた。    僕は思わず拳で撃ち落としにいった。    ・・・拳は猫をすり抜けた。  わかってたけどね。  場所によっては猫は透けていたし。  だから驚いたのはそこじゃなかった。  「!!」  僕は声を殺した。  両手はすでに火傷を負っていた。   猫をつかみ出したときに。    でも今さらに熱と傷みを感じた。  拳の皮がペロリとめくれていた。  コイツ・・・メチャクチャ高温の水蒸気なんや。  触ったらヤばい。    痛い痛いと叫んでみたい。  ただ、痛い様子をみせてはならないと訓練されつづけたせいで、ヤセ我慢してしまう。  しないといけない。  闘う以上。  弱ったところをみせたら・・・。      やられるからだ。  どうすればいい?  とうすれば?  気化猫はまた飛びかかってきた。  とにかく避けた。  避けるしかない。  この狭間が終わるのは後どらくらい?  狭間が終わればコイツは狭間と一緒に消える・・・かもしれないし、一見普通の猫のような姿になって、こっちにやってくるかもしれない。  とにかく、狭間が終わるのを・・・僕が最初にアイツを犯した狭間は一時間以上は余裕であったけどな  僕は油汗を流す。    火傷の痛みのせいか、気化猫が思っていた以上に速いせいか、僕にもわからない。  考えろ考えろ。  アイツは水蒸気だ。  高温の。  つまり。  つまり。   えっと・・・水蒸気は水が熱で気化したやつやから・・・。  水か何かをかけて温度を下げれば・・・。  水に戻って身体を保てないとか・・・。  でも、水はここにはない。  なら、なら、  もっとヤバいことにきづいた。  ぼんやり辺りを照らしていた、ドラム缶の中の小さな炎は・・・消えようとしていた。  いくら僕の耳が良くても・・・。  おそらくあっちは猫なだけに暗闇でも見えるだろうし。  攻撃を避けられない。  避けられなけらば・・・大火傷だ。    気化猫は牙をむいた。  牙と目だけは生々しい。  もしからしたら、あの牙、ちゃんと使えるんちゃうか?  僕の肉を引き裂きそうや。  アイツもアイツらは物理法則を無視するていってたし。  どんどん火が消えてんいく。  どんどん暗くなっていく。  気化猫は動かない。  闇になるのを待っている・・・。     ヤバい。  ヤバい。  何も思いつかない。  光が消えていく。    ・・・逃げれるだけ逃げる!!  狭間が終わるまで、どんなに火傷しようが、食いちぎられようが、逃げ回る。  死なない。   死んでしまえば・・・アイツを抱けない。  あの折れそうに細くて真っ白な身体を。  吸ったり噛んだりしたら、鮮やかな痕を残す甘い身体を。  もっと抱きたい。  泣かせたい。  メチャクチャにしたい。  喉の奥まで犯したい。   まだしてへんことは沢山ある。  もう乱暴にしても感じるようになった後ろの穴で何度もイカセて、気を失いそうになるのを許さへんようにして、「ごめんなさい・・・もう止めて」と哀願させたい。    まだ上に乗せて自分で動かされるとかやってへん。  「出来へん出来へん」とポロポロ泣くのを追いつめて、自分で動かさせて、言葉で苛めたい。  絶対に死なへん。  めちゃくちゃに抱きたい。  そして、甘やかしたい、めちゃくちゃ甘えて欲しい。  僕が好きやてわかって欲しい。  僕にわがままいうて?  僕に甘えて?  震えるみたいに絶望しながら「好きや」と僕に言うんやなくて、僕に愛されてるってわかって「好きや」と言って笑って。    そうしてもらうまで死なへん。  「逃げ切ったる!!」  僕はいささかカッコ悪い決意を怒鳴った。      

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