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悪意 5
「顔がわかったところで・・・探しようがないなぁ」
僕はアイツを抱きしめながら囁く。
作戦会議室中や。
猫殺しを捕まえる。
ひと月に一度位の頻度でアイツは猫を殺してる。
僕がみた、あの少年や。
走っているトラックに飛び乗る異様な身体能力以外は、猫殺しにも見えない、普通の少年にみえた。
そう、僕みたいに普通の。
「お前・・・自分のこと普通やと思ってるんか」
アイツが呆れたように言った。
腕の中の恋人はまだ泣きはらした顔をしているけど、もう普段のふてぶてしさを取り戻していた。
「まぁ、ちょっとはボクシングや喧嘩は強いけどな。でも僕より強いんいっぱいおるで?」
僕は言う。
ちょっとばかし、腕に覚えはあるし、高校生レベルやったら全国クラスやけど、世の中、本当に上には上がいくらでもおる
「・・・そっちやない」
アイツはボソッと言った。
「じゃあ何?」
僕は優しく髪を撫でながら言う。
頭のてっぺんにキスする。
僕、した後のこういう時間大好き。
アイツの綺麗な形の目が細められ、皮肉っぽく唇が歪んだ。
ああ、もう可愛い時間は終わりなんやね。
いやこれはこれで可愛い。
「・・・わからんかったらええ」
吐き捨てられた。
「鬱っといねん、いつまでベタベタしとんねん、離れろや!!」
おまけに僕の胸を叩いて僕から離れようとする。
もう恥ずかしがりやさんなんやから。
僕は離さない。
ベタベタしたい。
イチャイチャしたい。
「いや、マジで考えたいから離れてくれや!!」
本気で怒鳴られてしまった。
「・・・そんなに怒らんでもいいやん」
僕はブツブツ言う。
アイツは僕の腕から逃れて、片膝ついて座り考えはじめた。
僕は寝転びながらそれを眺める。
真っ白な身体のあちこち、服から隠れるところには僕がたっぷりつけた吸い痕だらけだ。
コイツ体育せえへんから、ええねん。
着替えせんから、思い切り痕つけていいねん。
本人も「・・・好きにせぇ」言うてくれてるし。
全然ええねん。
やらし、可愛い。
さわりたい。
「・・・異様な身体能力については説明がつく。多分、ソイツ・・・お前の町に住んどる」
アイツはしばらく考えて言った。
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