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悪意 11
暴れるアイツを逃がさんように抱きしめる。
可愛い。
非力なんが可愛い。
それでも暴れるアイツを押し倒した。
簡単に身体の自由を奪う。
両手なんか片手で掴んでしまえちゃうし、身体を体重と脚を使えば、ほら、もう身動きなんか出来へん。
自由が利く右手でアイツのメガネを外す。
重い前髪を書き上げる。
美しい輪郭を描く目と、淡い色彩の瞳。
作り物のように整った鼻と唇。
いわゆる女の子みたいな甘い顔やない。
でも綺麗や。
すごい綺麗や。
怒りに満ちている今、皮肉な乾いた表情がないその鮮やかさは目が奪われる。
「綺麗や、ホンマや。綺麗な目や」
目元にキスする。
「そんな言うな・・・」
アイツが怒る。
怒りに光るその目の美しさは本人にだけはわからないのだろう。
誰でもこれをみたら・・・絶対見せたくないけどな。
「綺麗な唇や」
唇にそっとキスする。
何度か誘うように触れると、アイツは思わず唇を開けてしまった。
習慣になってるからな。
僕は奥までその口の中を貪った。
「舌かて綺麗や」
甘く噛む。
「うっ・・・」
アイツか涙ぐむ。
何考えてんのかさっぱりわからへんけど・・・。
お前は綺麗や。
本当に。
アイツが大人しくなったので、着ていたシャツをめくりあげた。
真っ白な身体。
あちこちに僕の痕がある。
昨夜泣くまで弄った乳首はいやらしく腫れている。
「胸まで綺麗や。エロい」
キスする。
キスだけ。
触れるだけ。
ピクンとアイツが震えた。
したいけど、今はせん。
ちょっとくらい分かってもらいたい。
「綺麗な喉や」
「肩や」
「腕や」
僕は服をぬがせながらキスを落としていく。
指の一本一本にキスする。
「指も」
太股にキスする。
「太股も」
「膝も」
「臑も」
「脹ら脛も」
「足の甲も、裏も」
全てキスしていく。
「足の指も」
口にふくんでキスをした。
アイツが顔を背ける。
真っ赤になっていた。
下着を脱がせた。
抵抗されたが、そんなの意味ない。
アイツが泣く。
もう勃ちあがっていたから。
「ここは特に綺麗や」
僕は笑ってたくさんそこにキスした。
アイツは喘いだ。
もちろん、ひっくり返して、察して嫌がるのをおさえつけてアイツの穴にもキスをした。
コイツこんだけしてんのにまだ恥ずかしがって嫌がるねん。
ここ、大好きなくせに。
舐めたら絶対泣く。
「綺麗や。好きや」
僕は音を立ててキスをそこに繰り返す。
「アホか、そんなとこ綺麗なわけないやろがアホが!!」
泣き叫んでんのが可愛い。
裸に剥いてもうたし、週末やし。
このまましてしまっても良かったけど、せぇへん。
ここは大事なとこや。
「尻も綺麗や」
痩せた小さな尻にもキスをする。
「背中も綺麗や」
薄い背中にもたくさんキスをする。
そして正面を剥かせて、その顔を覗き込んだ。
涙を指で拭いながら・・・その目を真っ直ぐに見つめたまま言う。
「お前は綺麗や」
それが伝えたい。
本当にそう思ってるんや。
「お前、目がおかしいんや・・・他の人からは・・・」
アイツの声が震えて、目が泳ぐ。
コイツが鏡の中に見てるのはどんな姿なんや。
だから隠しているのか。
眼鏡や髪で。
お前はどんな化け物を鏡の中に見てるんや。
「他の人なんか・・・どうでもええんや。僕がそう思ってるんや、他のヤツなんか知るかい」
僕は言った。
誰からみてもお前は綺麗やなんて、
言ったところでコイツは納得しよらんやろ、なら今は僕の思いだけ届かせたい。
「お前は綺麗や。この先この顔に傷を負ったとしても、年をとっても何があっても。お前は綺麗や。お前が言うたんや。人間が見てんのは目やない、脳やって。脳は心やろ?僕の心はお前をもうそう見てるんやで」
僕は囁やいた。
人間は見たいものを見る。
アイツが言ったのは皮肉な意味で、思い込めばなんでも何にでもパターンを見いだす人間の目について、だった。
「心霊写真や幽霊なんて大概そんなもんや」
テレビの心霊特集に怯える僕にアイツは言ったのた。
「目じゃない。脳で人間は世界を見てんのや」
と。
だったら僕はコイツをずっと綺麗だと思うだろう。
僕の脳はコイツを綺麗だと認識してしまった。
「他のヤツなんかどうでもええ。お前は綺麗や」
その目を見つめながら言うと、アイツの綺麗な目から、大量の涙がこぼれていく。
「綺麗や。ずっと」
抱きしめた。
「うん」
アイツが小さく頷いた。
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