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獣 13

 本当のことを言えば、そのままその植え込みの中でアイツを犯してしまいたかった。  ズボンだけ引きずりおろして、舐めて濡らして、思い切り突いてやりたかった。  僕はキスだけで済ませられることはあまり少ない。  ましてやアイツからキスされてんやで。    本来なら、場所なんか気にせんと・・・例え、そこがすぐそこに人が往来している歩道と駅前の広場を遮る植え込みの中であっても、アイツを犯すのを躊躇しなかった。    アイツからしてきたなら・・・しゃあないしね。  人に見つかるのが怖くて怯えるアイツとするってのはたまらなくそそられるシュチュエーションだったし。  声我慢して、怯えて、それでも感じるアイツをガンガンに突くってのは・・・考えるだけでもキた。    どうしても嫌だというなら、喉の奥を犯してやればいい。  見つかることを怖がり怯えるアイツの喉は甘いだろう。  苦しみ泣くその喉奥に放ちたかった。  せんかったのは。  せんかったのは。  黒がウサギに似た顔で僕を見つめ僕の髪をひっぱった。   赤がサルに似た顔で僕の脚を結構強めに噛んだ。  コイツらがアイツの影から出てきたからや。  僕はもうアイツのズボンをずり下ろそうとしてた手を離さざるを得なかった。  もう一瞬遅かったらコイツを押さえつけて嫌がるのはわかっている、後ろの穴を舐めてるとこやったのに。  さすがにコイツらの前で犯すような真似までは出来へん。  それは・・・ちょっと。  人間の子供を思わすコイツらの姿形やその仕草の前では・・・ようせんのやね。  さすがの僕でも罪悪感が生まれちゃうんやね。  「・・・何でコイツらが」  僕は行き場のなくなった手でそれでもアイツの小さな尻を撫でまわす。  クソ。  舐めるだけでイカせてやりたかったのに・・・。  アイツが身体を離せと言うように、僕の胸を押した。  しゃあなしで、僕はアイツの身体を離した。  「痛い・・・」  僕は赤と黒に噛まれ髪を引っ張られ、泣く。  マジ、痛い。  「手伝ってくれたんや」  アイツが腕を伸ばせば、かなり肉に食い込むまで咬んでいた歯を緩め、髪が脱げるくらいに引っ張っていた髪を離して、赤と黒はアイツの腕の中に飛び込んできた。  双子の子供でも抱きしめるように、アイツは赤と黒を抱きしめる。  赤と黒は嬉しそうにアイツに抱きついている。  撫でられたら喜び、きゃらきゃらなんか言ってる。  仲いいな。  妬けるねんけど。  コイツらに性別がないってことで無理やり納得してんねんで僕は。  性別のない永遠の子供なのだと、アイツが言うたから。  「15年位で身体を作り替える。卵を産みその時、産んだ方の身体は捨て去り、卵の中の新しい身体に変わる。その際、最低限の知識以外は消し去る・・・永遠を生きるために必要なことや。常に新しい心を持つことが。ずっとコイツらは子供やねん」  と、アイツはそう教えてくれた。  「助けてもらったって・・・さっきのアレか」  僕は納得する。  本が飛んで燃えたり、歩道橋を突き抜けたり。  アイツの言うところの物理法則を無視したこと、だ。  「赤は幻覚をつくり出せる。黒は物質の状態を調節できる。 液体のようにしたり、固くしたり、気化させたり、柔らかくしたりな」  アイツは赤と黒を頬ずりする。  可愛くてたまらないといったように。  僕は気になった。  コイツの爺さんは赤と黒に屋敷のセキュリティーとアイツのちょっとした手伝いをあの屋敷に住むことと引き換えに契約した、と聞いている。  外に出て赤と黒がこんなことをするには「別の契約」がいるんじゃないのか。    僕がアイツとは別に白と契約したように。  「お前は・・・赤と黒に何を引き換えにこういうことをさせたんや」  僕は堅くなる声で尋ねた。    「大したことない。コイツらは・・・オレのこと好いてくれてるしな。友達やからな」  アイツは笑って誤魔化そうとした。  僕はアイツの肩を掴んだ。  アイツが痛みに呻き、怒った赤と黒が僕の両腕を血が出るまで噛んでるけど、離さない。  「・・・たいしたことない。いつか、この先、僕が死んだらその死体を食べていいって契約や」  アイツはため息をついて言った。  そして、赤と黒に言って僕を噛むのをやめさせていた。  ガッツリ開いた腕の穴から血が流れていて・・・コイツらが肉食なのをしめしていた・・・。  牙があるのだ、コイツらには。  僕はさすがに絶句した。  「お前を食わすやと!?」   一応隠れているので絶叫しなかったことは誉めて欲しい。  

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