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悪意 4
アイツはエントランスから部屋番号を押し、呼び出しボタンを押した。
僕は離れたところからそれをみていた。
夜の10時や。
非常識な時間帯やけど、この時間にならおるはずや。
まずは家におることがわかったらええ。
「はい」
エントランスにあるインターホンから声がした。
落ち着いた女性の声や。
猫殺しのおかんか。
「すみません、 君はいらっしゃいますか。明日学校で使うモノを渡すのを忘れていて・・・届けに来たんですが」
アイツは丁寧に言った。
普段の嫌みな喋り方やなくて、穏やかな物言いで、綺麗な顔を出したアイツは、自分でも言うように「ええとこの子」みたいやった。
まあ、お屋敷に住んでるし、ええとこの子やけどな。
古くからある家やし。
アイツの家はこの辺では有名や。
「呪われた家」やと。
ウワサやけどな。
化け物屋敷なんはホンマやったけどな。
ウワサはそれだけやない。
ホンマのことは・・・いずれ教えてくれるやろ
「・・・」
インターホンの向こうで猫殺しのおかんは黙ったままやった。
僕やったらこんな可愛い顔で、優しく言われたら家のドア開けて引きずり込んで押したして、逆にアイツの中に入ってしまうのに、このおかんは黙ったままやった。
返事はいつまで待ってもない。
そして、通話が切れいることに僕らは気づく。
アイツか眉をよせた。
何かを感じとったらしい。
「なんや?夜遅くやから・・・機嫌そこねたんか?寝とったんか?」
僕はアイツに言う。
にしても、息子の友達に失礼すぎん?
てか確かにこっちが失礼やけどな、でも息子が使うもん持ってきたった言うてる息子の友達にコレはないやろ。
まあ、底辺校の生徒むき出しの僕が言うたら息子がなんかに脅されて呼び出しくろてる思うやろけどな。
「いや・・・息子の名前を聞いた時にもう切ったんや。息子の名前を聞いただけでな」
アイツはやけに断定的に言った。
ちょっと難しい顔をしていた。
「・・・殺しが始まるのは夜明け前や。コイツが出てくるんをここで待ってもええ。もう出てこんかもしれんけどな。でも・・・ちょっと確かめておきたいことがあるんや」
アイツはメガネをかけ、前髪を下ろした。
可愛かったのに。
まあ、ええ。
後で裸に剥く時に外すからええ。
そっちのがええ。
僕だけ見れるのがええ。
僕はそれを想像してにやついた。
「なんかお前ずっとエロいこと考えてへんか?」
アイツがため息ついた。
「考えてる。お前とおったら常に!!」
僕が素直に答えると、アイツは赤くなった。
「お前は!!ホンマに!!」
アイツは怒りながらエントランスから出て行く。
「もうええん?」
僕はその後をついていく。
アイツはタワーマンションの外に出て、そのマンションを見上げた。
「26階やったな」
アイツは呟く。
え?
もしかしたら外から侵入する気?
どうやって?
僕は困惑した。
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