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狩り 11
「嫌だ・・・許して・・・!!」
泣き叫ぶ顔を殴りつけた。
声が無くなるまで殴る。
でも、気絶させたら面白くない。
ヒィヒィ
ソイツは悲鳴を止めた。
悲鳴を上げれば殴られることを学習したらしい。
ああ、屈服させる喜びは最高だ。
少年は笑顔を浮かべる。
あの女に、母親にされてきたことだ。
少年だけは靴を玄関に置いてはいけないこと、少年だけは自分から話しかけてはいけないこと、少年だけは部屋で食事をとらなければならないこと、屈服させて、あの女は「生かしてもらっている哀れな存在」だと少年自身に刻み込んできた。
だけど今、少年は知っている。
屈服させるのは自分であって、少年は屈服させられるものなんかではない。
だから今、コイツを屈服させて楽しんでいる。
「大人しくしとき、なぁ?」
少年は優しく囁いた。
殴って、少し赤くなってるけど顔はゆがんだりしていない。
せっかく顔が気に入って連れてきたのだ。
出来るだけ綺麗なままにしたい。
最終的にはぐちゃぐちゃにするけど。
「大人しくしたら優しくしたる」
少年は優しく優しくソイツの頬を撫でた。
ソイツが震えたのは恐怖だけではないことは確かだ。
街で誘ってついてきたのはコイツなのだから。
倉庫のホースで血を洗い流し、ついでに精液も掻きだした。
そして、脱ぎ捨てていた殺したヤツから借りていた服を着た。
下着代わりのTシャツをタオル代わりに身体を拭き、トレーナーとジーンズ、下品なスタジャン、サイズの合わない靴をはく。
そして、バラバラになった死体はそのままに、倉庫を立ち去りまた街に戻ったのだ。
真冬に濡れたままの髪で歩く少年は異様だったかもしれない。
たが、薬をやりすぎたのか、カットソーにストッキングだけで歩く女がいても、チラチラと見ているだけの街で、それ程問題はなかった。
足りなかった。
あれほどしたのにまだ足りなかった。
セックスは最高だった。
嫌がる口を開けさせられ、咥えさせられ、たまに身体を撫でられるだけのものとは全く違った。
支配して貪り、引きちぎる。
なんて楽しい。
快楽を貪り、支配し、いたぶり殺す。
自分のために使える他人の肉体。
支配し、屈服させる心。
苦痛を与え、心のひとかけらさえ残してやらない。
セックスとはこれほど素晴らしいモノだったのか。
少年は歓喜していた。
疲れや傷みは一切ない。
殺す時、抵抗され、つけられたかき傷さえ消えている
それを別に何故か不思議だとかさえおもわなかった。
相手を探して街をさまよいソイツを見つけた。
すぐに分かった。
家にいていられない子供。
少年と同じ。
家にいれば辛いから、夜の街へ逃げだす子供。
少年は公園へ逃げて、猫を殺すことを覚えた
だが、街の人込みの中で安らぎを覚える子供の気持ちは分かった。
夜の公園は恐ろしいからだ。
闇があり、一人でいると怖いからだ。
流れている人の中にいる安心感はわかる。
家の中では絶対にない安心感。
人が見ているから、家という密室ではないからの安心感。
ソイツを一目みた時分かった。
同類だと。
いや、同類だったと。
人込みの中をたださ迷うだけで、その中に自分を溶かしてしまうことでソイツは安心しようとしていた。
惨めな自分であることから逃げようと。
同じ年頃。
まだ家庭から逃げるだけの能力を持たない少年。
気に入ったのは顔が良かったからだ。
さっき殺したヤツは・・・正直好みではなかった。
本当はあの獣がいい。
あの獣はいずれ訪れる。
それまで楽しむなら、好みのモノがよかった。
女にはどうにも興味がわかなかった。
殺すだけなら良いかと思ったが・・・。
線の細い、如何にも虐げられそうな綺麗な横顔が気に入った。
支配し、屈服させ、貪りたかった。
声をかけた。
濡れた髪にこそ驚いたが、優しげな外見の少年にソイツはむしろホっとしたようだった。
「暇?ちょっとつきあわへん?」
少年はソイツの腰を抱いて馴れ馴れしく引き寄せた。
ソイツは拒否しなかった。
分かった。
拒否出来ないのだと。
やはり拒否出来るように育てられていないのだ。
少年の唇に微笑みが浮かんだ。
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