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狩り 14

 少年は欲望を抑える。  優しく優しく、少年を扱った。   柔らかく甘く溶けてしまうように、抱いた。      覚えたてのセックスの技術より、優しさこそがコイツの望む全てだとわかっていたから。  「気持ちいいやろ・・・」  優しく身体を撫でてやれば、そいつはガクガクと何度も頷いた。  少年は笑った。  さらに優しくソイツを扱い、花びらに触れるようにそのうなじに唇を落とした。  高架下の冷たい駐車場で、ズボンだけを脱がされ、四つん這いにされながら、それでもソイツは初めて優しく抱かれたのだった。  いつものようにこれも合意から抱かれたわけではなかったけれど。  初めての優しさ、その甘さにソイツは溺れた。  少年の指を甘えるように吸いさえした。  唇を与えられたなら夢中で応えさえした。  「ああっ・・・いい、イク・・・イク・・・」     そうするように教え込まれているのだろう、ソイツは叫びながらイった。  それに合わせるように少年も中に放った。  自分の中に迸る熱ささえ甘くて、ソイツはまた震えた。  「気持ち良かったやろ?」  背中から抱きしめられて囁かれ、ソイツは少年に頷いた。  どこか夢見心地にソイツは頷いた。  もしかしたら。    もしかしたら優しいヤツなのかもしれない。  ソイツは思っていた。  最初に殴られた時の恐怖は消えていた。  「可哀想やな。ホンマに可哀想やな」  少年はまだ中に入ったままソイツの耳を舐めながら囁いた。    それに感じてしまいソイツは喘いだ。  「優しくされたらそれだけでええなんて・・・なんて哀れやねん」  優しく耳を噛まれた。     思わず声を漏らしたが、それは少しばかり強く噛まれたからだった。    乾いた笑い声がした。  少年は笑っていた。  そこにはザラリとしたモノがあった。  「・・・優しくされたらなんでもええて、なんやの。どこまで惨めな生き物やねん、お前」  声は冷たさをはらみ、もう優しさはなかった。  それに身体を強ばらせたが、もう遅かった。  ガリっ  強く耳を咬まれた。  ソイツは悲鳴をあげた。    ソレは戯れなどではない、単なる暴力だった。  さきほどまでの優しさに融けきった身体はいつものように痛みをシャトダウンをしてくれない。  いつもなら痛みを遠くに感じさせてくれるのに。  「アホやろ。こんな駐車場に連れ込んではレイプするヤツがホンマに優しいとか思てたんか」  少年は笑った。  グチャッ  耳から奇妙な音が響いた。  激痛が走り、ソイツは叫んだ。  その後から生暖かいものが流れ出すのを感じた。  少年が何かをソイツの顔のそばに吐き出した。    それはソイツの耳だった。  ソイツはそれを見て声の限りに叫んだ。  少年は楽しそうに笑った。  「約束通り、優しい気持ちようしたったんや、これからは俺を気持ちようしてもらう」  少年はソイツの頭を髪をつかんで駐車場のアスファルトに押し付けた。  そしてもう片方の手で腰を押さえこみ、乱暴に突き始めた。  それは一切の優しさのない動きだった。    「ああ、やっぱり一度出しといたらスムーズやな」  少年は満足そうに言った。    「ああくそっ、気持ちええわ」  少年は乱暴に腰を叩きつけた。    ソイツの悲鳴が響く。  すっかり解かれてしまった警戒心は身体や心の防衛機能を失わせていた。  まるで初めて暴力を与えられた時のように、暴力は暴力として身体を焼いた。    それこそが少年の望んだことだった。  猫を殺すために、粘り強く猫に優しさを与える。  それと同じだった。  信じきって、その身体をこの手に任せてからいたぶることが少年は大好きだったからだ。  「ああ、たまらんわ」  少年は腰を掴んで抉った。  乱暴に抉られ、優しさに慣れた身体はそれに身体をひきつらせる。    「ひぃ」  ソイツは衝撃に白目をむいた。  酷い行為には慣れていたはずなのにたえられない。  ほどけた心と身体がそれを受け入れない。    少年は笑いながらアスファルトにソイツの頭をガンガン叩きつけた。  鼻が折れ、血か吹き出した。  「酷い顔やな。顔は良かったのにな、まあええとうせその鼻も千切ったる」  腰を乱暴に回しながら少年は楽しそうに笑った。  「俺はな、お前みたいなん一番嫌いやねん。ちょっと優しいされたら目潤ませて股開らく、アホは殺したいねん」  少年は囁いた。  それは優しいとも言える声だった。

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